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「A。今日一緒に帰れる？」
「え、珍しい」
小・中・高と同じ学校に通ってて、私の家の目の前に家がある所謂幼なじみのけいちゃん。
朝は大体一緒に行ってるけど、帰りは私が友達と帰ったりけいちゃん自身も友達と帰るから一緒に帰ることは中々ない。
けいちゃんから一緒に帰ろうって言われたのは少し久々なことだった。
「加藤くんはいいの？」
「うん。シゲには言ってある」
加藤くんっていうのはけいちゃんの親友で,登校の時以外はずっとけいちゃんと一緒にいるイメージがある。イメージだけど。
2人で帰りの時間に道を歩くのも久々で、いつもより少し歩く速度がゆっくりだった。
いつもは特急に乗って帰るけど、今日は各停にしようかってけいちゃんが言うから途中で降りてどこかカフェとか行こうよって話をする。
「でも珍しいね？加藤くんじゃなくて私と帰るのって」
「Aに、話したいことあってさ、」
話したいこと。
その言葉に少し胸がざわざわする。
中学生の頃からよくテストの勉強をしてた隣の駅の近くにあるカフェ。
お母さんの友達の如月さんが経営してる。
こんにちはーと言いながらお店の中に入った私とけいちゃんを見て「いらっしゃい〜。いつものでいい？」と言っていつもと同じ場所に通してくれる。
「あのさ、さっきも言ったけど、Aに話ある」
いつもけいちゃんが頼んでるミルクティーとチョコケーキ、私が頼んでるココアとフルーツタルトが届いて、如月さんが厨房に入っていったのを見計らってけいちゃんが話し始める。
「……俺さ、彼女出来たんだ」
「……え、」
思わず手に持っていたフォークを落とす。
私とけいちゃんしかいない店内に、フォークと食器がぶつかる音が響く。
「ちょっ、A！？大丈夫？」
「ぁ、ごめん、大丈夫、」
「今大きい音したけどどうした！？」
厨房から出てきた如月さんにも心配されて、怪我がないかとかも確認してすぐに厨房に引っ込んでいく如月さん。
「A？どうした？」
「ううん。大丈夫」
いつもと同じ表情で、いつもと同じように心配してくれるけいちゃん。
「…で、けいちゃんの彼女って、」
「……愛菜なんだけど、」
「愛菜、なんだ」
愛菜は私が高校生になってから初めてできた友達であり、親友。
愛菜に好きな人が居るんだろうなっていうのはなんとなく分かってたけど、それがけいちゃんだとは思わなかった。
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作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
