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五人 ページ38

翌日。

朝食を食べ終えたところで、光里から電話がかかってきた。

十時に迎えに行くから、待っていて欲しいとのこと。

その時、時計は八時を差していた。

それなら、部屋の掃除でもしていようか、そう思い、物置から掃除機を取り出した。

長い間入院していた為か、部屋は埃臭くなっていて、昨晩はよくこんな所で寝れたものだな、と思う。

窓を開けると風が良い感じに入り込み、カーテンがゆらゆらと揺れた。

と、その時、窓際に置いてあった棚から、何かが音を立てて落ちてきた。


「ん?何だ………?」


拾い上げたのは写真立てだった。

俺が、高校生の頃、Aと光里と撮った写真だ。

確か、高三の文化祭の時。

俺らのクラスはおばけ屋敷で、光里は貞子(しかも結構リアル)、俺とAはゾンビの仮装をした。

この写真はその時にクラス前で撮ったものだ。

懐かしいな、と写真立ての縁をなぞる。

すると、チクリ、と指先が痛んだ。

棘でも刺さったのだろうか。

見ると、指先がからは血が滲んでいる。

それが、無性にアイツを思い出させてしまって。

不意に、目頭が熱くなる。

こんなの、泣くほどの痛みでも無いのに、何故か、涙が止まらなくなって。



「…Aっ…」



ポツリと口から溢れた言葉は、誰に届くことなく宙に消えた。



ーーー



「着いた…な……」



午前10時半。

俺は光里と善野さんと共に、Aが住んでいたアパートまでやって来た。

二階建てで築数十年はあろうそれは、善野さんが住んでいたもの程ではないが、随分と寂れていた。

Aが生きていた頃に何度も足を運んだ事はあったが、その時よりも雰囲気が暗くなっている気がする。

そういえば、此処には彼しか住んでいなかったんだっけか。

誰も住んでいないというだけでここまで雰囲気が変わるものなのか。



「あ、これが部屋の鍵ね。ここの大家から借りて来たから」



そう言って善野さんはポケットから204と書かれた鍵を取り出す。

俺は礼を言ってからその鍵を受け取って、アパートの二階へと足早に登っていった。

Aの部屋は一番奥の角部屋だ。

なんでこの部屋なんだ、部屋なら他にも沢山あるだろう、と以前彼に言ったことがあったが、
「奥の角部屋ならお前以外来る人がいないから」
と言われた。

恐らく自分の犯行がバレない為というのが一番の理由だったんだろう。

扉の前に立ち、鍵を差し込む。

そして、ゆっくりとそれを回した。

六人→←四人



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もくもく@鬼灯なぅ - みーさん» あ、本当ですね!ご指摘ありがとうございます! (2015年11月7日 1時) (レス) id: 4a5e4162ae (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 報告書二枚目の、近所の大学生と若い警官数名が犠牲になった事件で、夜行が夜光になっています。故意でしたら、すみません。 読んでいてとても引き込まれる話で、面白いです。私もこんな風にかければなあ笑 (2015年11月4日 20時) (レス) id: bcd7e9b2cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もくもく@鬼と神獣 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2015年10月26日 2時

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