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二人 ページ35

光里はすぐに電話に出たみたいだった。

善野さんが言葉を発そうとする前に、光里の大声が聞こえてくる。

善野さんはやや苦笑すると、携帯を俺に渡した。



「声、聞かせてあげて」

「え?……は、はい」



携帯を受け取り、耳元に近づける。



「……もし、もし?」

『……陽雅?』



聞き慣れた声がする。

彼女の声だ。

待ち望んでいた声。

その声に思わず嗚咽が漏れてしまいそうになる。



「う、うん」

『ほ、本当に?」

「本当」



刹那、携帯の向こうから、ガタン、とか、ガシャーン、とか、色々な音がした。

なんだか少し悲鳴も聞こえる。



「光里!どうした!」



呼びかけても反応は無い。



「どうしたの?」



善野さんが俺の顔を覗き込む。

恐らくただならぬ俺の様子を見て心配してくれたのだろう。



「なんかあったみたいで、返事が無いんです。大丈夫かな……」

「あー……。多分、大丈夫だと思うよ」

「え?それはどういう……」

「ようがああぁぁぁぁぁぁァァ!!!」

「え!?」



突然、病室のドアが勢いよく開き、廊下から女の人が飛び出して来た。

そのまま俺のいるベッドに突っ込みそうになるが、善野さんが抑えてくれる。



「光里?!」

「落ち着いて、光里ちゃん!」

「良かったぁぁぁ、ようが……」



飛び込んで来た人物、光里は、顔を涙でぐしゃぐしゃにしていた。

善野さんが手を離すと、光里は俺が寝ているベッドに顔を埋めた。



「陽雅まで死んじゃったら、どうしようかと思ったぁぁぁ…」



肩を震わせて、嗚咽混じりに喋る光里。

俺はその頭に手を伸ばし、ポンポンと優しく撫でる。



「……心配かけて悪かったな。もう、大丈夫だから」

「…うん、うんっ!」



その時、廊下から何人か看護師さんが入ってきた。

光里を追ってきたらしく、月野さん、と光里に声をかけてくる。

光里は、そのまま泣きじゃくりながら連行されていった。

再び静寂が訪れる。

俺は、不意に気になった事を善野さんに聞くことにした。



「善野さん」

「ん?なんだい?」

「光里が言ってた、俺“まで”って…、どういうことですか?」

「…!」



一気に善野さんの顔色が変わる。



「まさか、A……」

「………言うのは、きみたちが退院してからにしようと、思ってたんだけどね」

「!!」

「陽雅君を刺したあと、夜光君は廃工場の中に逃げていった。僕の部下が追いかけたんだけど……彼は」

「もう、言わなくて良いです」

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もくもく@鬼灯なぅ - みーさん» あ、本当ですね!ご指摘ありがとうございます! (2015年11月7日 1時) (レス) id: 4a5e4162ae (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 報告書二枚目の、近所の大学生と若い警官数名が犠牲になった事件で、夜行が夜光になっています。故意でしたら、すみません。 読んでいてとても引き込まれる話で、面白いです。私もこんな風にかければなあ笑 (2015年11月4日 20時) (レス) id: bcd7e9b2cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もくもく@鬼と神獣 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2015年10月26日 2時

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