君とカフェモカ

えぴそーど　１５ ページ15

*
「いらっしゃい、内村君！今日もAちゃんの練習台？」

「そうっすね…最近はイヌかネコか分かるくらいにはなりましたね。」

「おおっ！そうなんだ…これは――――――Aちゃんが上達した？で、

いいのかな？」

「う〜ん…オレの目が―――」

「今、あたしの事、なにか言いましたかね…？」

　カウンターの奥からAが顔を出した。

「えっ？な、なんにも言ってないよ…ねえ？マスター！」

「あ？いや、なにも――――――じゃ、ボク、上がるから。内村君、ごゆっ

くり！」

　そう言うとマスターは慌てて店を出て行った。

「アンタら、あたしがいない時にあたしの悪口ばっか言ってんだろ？」

　まさか―――

　マスターはAの事、まるで自分の娘のように可愛がってるのが分

かる。

　この店の鍵だって預けるくらいに信頼してるのに…

「なに？今の本気にした？冗談だって！アンタら、そんなヤツじゃないって

知ってるよ…」

「うん…」

　オレのホントの気持ちも知ってる？

　聞いてみたかった。

　Aの気持ちを聞いてみたかった。

　オレのこの気持ちを知ったらAはどんな顔するかな？

　嬉しそうに笑ってくれるかな？

　それとも―――困った顔されたらどうしよう…


　カランコロン…

　ドアベルが鳴ると同時にドアが開いた。

「すみません！もう閉店し――――――」

　Aが驚いた顔をして店に入って来た男をじっと見ていた。

　誰？この男は誰なんだ！？

「急にゴメンな…俺、明日、帰るんだ…その前にどうしても、もう一度

Aに会っておきたくて…」

「先輩は？一緒じゃないんだ…？」

「俺、一人で来たんだ―――Aがこの店で働いてる事、教えてくれて行

って来いって言ってくれた…」

　なにがなんだか訳が分からない。

　先輩？

　３年振りに会うって言ってた先輩の事か？

　そして、この男は先輩の彼氏―――？

「オレ、帰るわ…」

　気になるけど、このままここにいちゃいけない気がして帰ろうと席を立

った。

「ダメ！ここにいて！！側にいて！！」

　Aがすがるような目をしてオレを見ていた。

　はぁ？オレ、ここにいてもなんの役にも立たないだろうに…

　それに、この男だっていい気持ちはしないはず。

　でも…それでもAはここにいてくれって言ったんだ―――

　オレは黙って奥のテーブルに移動した。

*

えぴそーど　１６→←えぴそーど　１４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す