６ ページ6
「ねぇ、僕に手を上げる気かい？酷いなぁ…」
「黙りなさい！その汚らわしい手で私に触れたことを一生後悔するといいわ。アズカバンでね____」
インカーセラス 縛れ！
杖から縄が飛び出し、男をきつく縛り上げた。縄の感触を確かめるかのように身を捩ったあと、男はにたりと笑みを浮かべる。
「うん、悪くない。やっぱり君は素晴らしいよ、A。でも詰めが甘い。優しすぎる」
「何を……」
じゃあ、またね。そう言葉を残した刹那、男の姿は消えた。姿くらまししたのだ。
「卑怯者め……おい、フリント！」
途端に身体から力が抜け、床にへたりこんだ。瞳からは生理現象的に涙がぽろぽろと零れ落ちる。
「大丈夫か？どこか怪我でもしたのか？」
「……怖かった…本当に…」
焦ったように駆けてきたマルフォイが、泣きじゃくる私に戸惑った表情で問いかける。嗚咽しながら返事をすると突然自らの蝶ネクタイを解いて、私の顎を掬うようにして上を向かせた。
「何する気？」
そのまま、真白い布で涙や肌についた血痕を拭ってくれる。その仕草があまりにも優しくて、私は思わずくすりと笑う。
「何がおかしい」
「変よ。だって、マルフォイが私に優しくするなんて」
「その減らず口を何とかできないのか？」
眉間に思い切り寄った皺は、父親にそっくりである。未だ震える手で縋るように彼のタキシードの裾を掴む。こうしていると、安心するのだろうか、少しだけ動悸が治まるような気がして。
「それ、綺麗にして返すわ」
「新しい物を買うから気にするな」
汚れてしまった蝶ネクタイに手を伸ばすと、マルフォイはそれを断って、無造作にポケットに突っ込んだ。
「ねぇ」
「なんだ」
「その…助けてくれて、ありがとう。貴方が来てくれなかったら私、どうなっていたか…」
「たまたま通りかかっただけだ。これで貸しひとつだな」
いつものように嫌味ったらしい口調でそう言う。でも、私は知っている。彼が必死で探してくれたであろうことを。
男の向こう側に見た時、オールバックの髪は崩れて、額には汗を滲ませていたから。きっと言ったら怒るだろうから言わないことにした。
「何かあったら言って。この借りはきっちり返すわ」
私の言葉にフン、と鼻を鳴らして答え、彼は隣に腰を下ろした。
ありがとう。私はその横顔にもう一度呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 430人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まな(プロフ) - とても面白くて続きが気になります！更新気長に待ってます！ (6月29日 21時) (
レス) @page28 id: 0028381799 (このIDを非表示/違反報告)
平凡な人(プロフ) - まるさん» フレンド申請を私のほうでやらせていただきますね!すると通知が来ると思うので、そこをポチッとなです☆ (2022年4月17日 22時) (レス) id: 6ae6cf354a (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 平凡な人さん» こんばんは、コメントありがとうございます！本当にドラコは可愛いですね…。フレンドのお話是非お受けしたいのですが、疎くて方法がわからないです。教えてください🙏 (2022年4月17日 22時) (レス) id: 91e2d78cc8 (このIDを非表示/違反報告)
平凡な人(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいております!ドラコ可愛いですよね!!フレンドなりませんk(((( (2022年4月16日 22時) (レス) @page13 id: 6ae6cf354a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まる | 作成日時：2022年4月6日 20時
