裏切りのお酒2 (ページ9)

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人の気配を感じて目を開けると、部屋の外からいい香りが漂ってきた。

ゆっくり扉を開ければ、キッチンには私のエプロンをした降谷さん。

「ん、おはよう。起こしたか？」

『おはようございます。私が作りますよ』

予備のエプロンを身に纏うが奪われる。

「君は休みなんだからゆっくりしているといい」

『だったら、降谷さんは仕事なんですから…』

「僕は大丈夫ですよ。ほら、Aさんは座って座って」

突然の安室さん登場に慄く暇もなくソファに座らされ、いつの間にか作られていたコーヒーを渡される。

「安室特性のポアロコーヒーです」

『…いただきます』

ゴクッとのどに通すと広がる柔らかな苦み。

『おいしい…』

「よかったです」

朝から飲むおいしいコーヒーに気持ちが緩んだのか、安室スマイルに無意識に微笑んでいた。

「…」

それを見た安室、いや降谷さんが呆然とした顔をする。

「君は、笑った方がいい」

『え？』

「いや、何でもないです。朝ごはんができたので、持ってきますね」

安室さんはキッチンへ戻り、お皿に盛り付けを始めた。

「じゃあ、行ってきます」

『行ってらっしゃい。安室さんの家、落ち着いているといいですね』

「…そうですね」

お邪魔しましたと頭を下げてマンションを出て行った。

のは、今から５時間くらい前の話。