204億 ページ17
降谷side
呑気に眠っている栃木の頬を手の甲でさらりと撫で、寝室から出る。
いや、出ようとしたが、本棚からはみ出してる紙が気になり足を止めた。
いけないことだとは、分かっている。けれど、何故か手が勝手に伸びた。
「…俺たち、か」
その紙を引っ張り出すと、それは写真で、しかも警察学校時代の写真だった。
真ん中には満面の笑みを浮かべている栃木、その両隣に格好つけている松田とハギ、松田の隣に伊達が明るく歯を見せて笑っている。ハギの隣は俺とヒロ。ヒロはピースして笑っていて、俺も、今より若々しい顔で笑っている。
楽しいことばかりじゃなかった。
辛いことも多かった。
けれど、あの時の時間は本当に尊くて。
今はいない仲間と、残された俺と栃木。
もう、無くしたくないな、とすやすやと寝ている栃木に目線を移す。
「…ん?」
紙を引っ張った拍子に、アルバムのようなものが出っ張っていた。
それを失礼承知で、引っ張り出してきて、開く。
「日本一周旅行…?アイツ、そんなことしてたのか」
アルバムの中身は、アイツが8億を当ててから行った旅行の内容。
本当に47都道府県行っていたようで、沢山の写真とその隣には一言が添えられていて。
最後のページには、『いつか大切な人と行きたいな』と一ページまるまるに書いていた。
「俺とじゃ、無理だな。忙しすぎる」
組織壊滅後なら可能性はあるけど、と一人笑う。
その前に、お前の大切な人、一番大切な人になれる自信が無い。
だってお前は、まだハギのこと引きづってるんだろう。好きだと、言っていたし。
口約束だったとしても、お前たちは婚約していた。
お互いがお互いを大切に思いあっていて、そんなの周りから見てるだけで分かっていた。
「ほらね、コナンくん。…俺が入る隙間なんて、なかったんだ」
コナンくんは何かを察して、俺を元気づけようといろんな言葉をかけてくれたけれど、俺はわかってる。
こいつを幸せにしてやりたい。
でもその役目は俺じゃない、ハギだった。
ハギはもうこの世にはいない、あの優しくお調子者のハギはいない。
そしてハギの代わりは、俺にはできない。
「……ん、…ふ、るや?」
「……今起きたか阿呆」
アルバムをさっと閉じて、寝ぼけたバカを見て笑った。
.
ラッキーアイテム
革ベルト
3972人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こたきんぐ(プロフ) - ありばばさん» こちらこそ読んで頂きありがとうございます!!泣いてくれたんですね…少しでも心動かせたみたいでマジで嬉しいです!番外編の方もし未読でしたら、お暇の時にぜひ! (2022年8月12日 20時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
ありばば - 良作をありがとうございます…!本当好きです、マジで、マジで!!一時はどうなるかとハラハラハラハラしてました泣きました。もっかい見ます (2022年8月11日 11時) (レス) @page47 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - \(^o^)/さん» もったいないお言葉です…。ありがとうございます!笑 (2022年1月23日 2時) (レス) id: 3277e9d770 (このIDを非表示/違反報告)
\(^o^)/ - 神作品とはこのこと、、、!!!679を680にしてやったぜ! (2022年1月19日 23時) (レス) @page47 id: 111ab3751f (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 眠夢_さん» ええありがとうございますー!!笑笑 その水拭いて差し上げたい…( ˘ω˘ ) 少しでも心動かせたようでよかったです笑笑 (2021年10月4日 15時) (レス) id: 3277e9d770 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2019年4月5日 11時