８億当てたって、私は変わらない。【名探偵コナン】

２０２億 ページ15

Aside


それから私たちはバタバタと準備をし始める。

哀ちゃんと博士は今から博士の家に行って、改めて事件を調べると言った。
元太くん、光彦くん、歩美ちゃんは怪しい人がいないかパトロールしてくると張り切っているので、その三人を見守るために蘭ちゃんと園子ちゃんを付けさせてもらった。

今回の犯人は、本当に危ない。

目的が正直わからないのだ。…内臓が欲しいのか、ただただ人を殺したいのか。
はたまた、そのどちらともか。

そしてその犯人は今まで何をしていた？
大きく、残酷で、悲惨な事件を起こし、多くの人を泣かせた犯人は今まで何を、してた？

証拠も残さない、素性も一切知られていない、捕まらない。
被害者の家族、知人、どれだけ歯がゆい思いをしたか。

私だけじゃない、皆この犯人を心から捕まえてやりたいと思っている。

ケンを、松田を殺した犯人に抱いていた感情と同じだ。
憎くて、悔しくて、いっその事そのまま、殺してやりたいだなんて。



「Aさん、僕達も行きましょう」

「…はい、そうですね」



それでも自分の理性を必死に抑えて殺さないのは、あんたのおかげでもあるかもね降谷。

ケン、松田、伊達、親友のヒロ。

私も沢山の人を無くしてきたが、彼も私に負けず劣らず色んなものをなくしている。
そんなもの負けてくれていいんだけどさ。


私が人を殺していなくなったら、降谷のそばからまた人がいなくなるじゃない。

そしてその逆に、降谷が私の元からいなくなったら私の回りからまた一人、大切な人が消えることになる。


もう、どんな形でもいやだよ、いなくなるなんて。

降谷のことが、好きだとか、好きじゃないとか関係なく。


じわっと滲んできた目元を擦り、前を向いてポアロを出る。
私の後を降谷だけがついてきて、少し歩いたところで降谷が路地裏に私を引っ張った。



「無理するなって言ってるだろ」

「それは安室さんが言ったんだよ」

「俺からも言う。無理はするな、眠いなら寝てくれ」

「公安は寝させてくれないんだけど」

「今はその公安がお前を見放してるんだ、目を離してるうちに、寝とけ」



執拗に睡眠を要求してくるもんだから、なんだか眠くなってきた。催眠術かなにかかこれ。

こんな時に睡眠欲が出てくるとは思わなかったなぁ、なんて思いつつ、まぶたが落ちてくる。

家はどこだという問いに、私は素直に本当の家の住所をサラッと吐いてしまった。


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