ゼロから始める関係性がいい。【安室透】

２０から ページ22

Aside


「え、え、え、えっ？」

「油断して、混乱してて、可愛い」

「いや、え、い、みわかんない、…離してっ！！」




意味わからん言っときながら、私は今の状況は非常にまずいと察し、腕を振りほどこうとする。

しかしまあ。

ふりほどけないわな。




「知ってた？俺のこと、俺Aのことずっと見てたんだよ。ずっと」

「ぁ…ストーカー…？」




ストーカーとか今までまるで他人事のように考えていた。

だって、私に限ってとか。
私みたいな奴よりもっと可愛い子いるしとか。

正直、この世の中には物好きがいることを忘れていた。

心の中で白目を向いていると、チャキッと銀に光る鋭いものを私の首に突き立ててきたこのストーカー。




「騒いだら、キっちゃうから」

「…っぅわぁ…」




もっと泣け喚くとか想像してたけど、想像していたのより全然頭の中は冷静。
なに、怖すぎて？あは笑えねぇー！




「そのまま、静かに、あそこの車に乗って」

「え、ぁ…」

「大丈夫、心配しないで、悪いようにはしンガッ！？」




ニヤニヤしながら私の耳元で気持ち悪く囁いていた声がすっと消え、代わりに鈍い音が聞こえた。

それが誰かが殴った音だって気づくのはそう遅くなかった。




「っ大丈夫ですか！？」

「あ、あむろ、さ…」




なんと、とても焦ったような顔をした安室さんが私のストーカーの顔面に、思いっきりグーパンチをお見舞いしたようだ。

いや、こんな顔して威力すげぇのな。


じゃないじゃない、助けてくれたんだ、お礼お礼。

お礼言わなきゃ。


わかってんのに。

常識なのに。




「地味にごわがっだぁあああっ」

「わっ！」




つい子供のように泣きじゃくって、助けてくれた安室さんに抱きついてしまった。

頭の中は冷静でも、体は正直。


あぁ、私めちゃめちゃ怖かったんだって

安室さんに抱きついてやっと気づいた。

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