ゼロから始める関係性がいい。【安室透】

１６から ページ18

Aside


「お兄さんの、お名前は？」

「え…石川 天珠(てんじゅ)です。」




珍しい名前でしょう？なんて笑うと、安室さんもそうですねと言って笑った。

しかしその目は、今日見た沖矢さんの目と同じで何故かどこか、悲しそうな目をしていた。




「安室…さん？大丈夫ですか？やっぱりバイト後じゃあきついですよね。まあ誘ってきたのは貴方ですけど」

「すみません、大丈夫です。

…Aさん、もし、もしお兄さんが死んだ原因が、事故ではなかったら、どうしますか」




なんて、安室さんはいつもの柔らかい瞳に反した、あの時のような瞳を私に向けて言った。
あの時っていうのは勿論、昨日のことだ。

事故じゃなかったら…って、なにそれどういうこと？

…故意で殺された、とか？いやいや治安悪いな米花町。




「な、んですか急に。兄は死んだ、それだけですよ。死因とかどうでもいいですし」

「…そうですか、すみません急に。僕、一応探偵やってるのでちょっと気になっちゃったんです」

「いや別に大丈夫です。…探偵って例えばどんなことするんですか？尾行とか？」

「はい、しますよ」

「一歩間違えたらストーカーですよねぇ、ハハハ。…お願いですから私は尾行しないでくださいね」

「されるようなことでも？」

「ひてないです！！」




もぐもぐと柔らかい高級お肉を頬張りながら、私は安室さんの言葉に全否定する。

なんかこの人一周回って頭逝ってるように見えるからさ、下手したら私の日常生活監視するんじゃないかって…それはないか。


その後、運ばれてくるお肉たちを食べながら、私たちはたくさんの話をした。

私の仕事の話だとか、私の友人の話とか、私の学生時代の話とか…あれ、私の話ばっかだ。
なんて気づいた時にはもう食事は終わっていた。


あのね、聞いて。私が好き好んでペラペラ一方的に言ってたわけじゃないの。安室さんに誘導されるように喋らされたみたいな感覚なんだよっ！



これは、私のゲームのし過ぎだからそう思うだけなんだろうか。


私がゲーム脳だから、彼がとっても怪しく見えるんだろうか。

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