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「まぁ…コートの外に出ちゃえば人が何を考えてるかは分かんないですけどね。
よくチームメイトに
"バレー以外はほんとにぽんこつ"
って言われます。失礼ですよね笑。」
『嬢ちゃん‼ほれ、2杯目‼
やっぱりサッカーにビールは最高だよな‼』
再び、隣の席に戻った男性からビールを手渡された所でピッチがにわかに騒がしくなりだす。
「……
後半戦が始まる。
"始まる前にもう一個だけ、聞いても良いですか?"
「勿論。」
"チームメイトのマイヤーさんが言ってたんですけど、充電ってどういう意味ですか?"
『今日は"充電"の日だから。』
「言葉の通りです。スポーツ観戦は勉強も兼ねて、なんて格好付けて言っちゃったけど…本当は……」
"本当は?"
「頑張ってる選手を見て、自分を奮い立たせたいだけなのかも。」
それはまるで独り言の様だった。
既に彼女は、真っ直ぐピッチを見つめていた。
この時の彼女は
すぐ隣に居るというのに
どこか遠く、どこか危うく見えた。
試合は2-1でシャルケが勝利を収めた。
歓喜のシャルケサポーターの波に揉まれ、結城はこの日3杯目のビールを奢って貰う事となった。
人混みをやっとの思いで抜け
スタジアムから出口へ向かう途中、
今となってはそれなりに海外に順応している彼女に聞いてみた。
"大学卒業後、すぐに海外へ行く事に抵抗はなかった?"
当時結城は22歳、すぐに海外に渡らずとも
"そのままVリーグに進み経験を積む"
という選択肢も大いにあった筈だ。
「……」
"……"
何かマズイ事を聞いたのだろうか。
我々がぶつけた何気ない質問に
密着して初めて、結城の顔から笑顔が消えた。
「よくTVでは"武者修行"とか"強さを求めて…"って言われるんですけど、実際は逆なんです。」
"逆?"
「日本から逃げただけなんです。
……経歴が経歴だし
"全ての人に応援して貰える訳がない"
っていうのは…分かってたし、覚悟出来てた…つもりでした。
当時は今みたいに図太くなかったから、どうしても…日本語を聞きたくない、時期があった。
だから大学途中から語学を猛勉強して日本を出ました。
海外なら、批判の声があっても何を言ってるか分からない分、集中出来たから。」
"……"
「申し訳ないんですけど、この後行く所があるので今日はこれで失礼します。」
この日の密着は、ここで終わり。
アルコールのせいか
今日の彼女はいつもより少し饒舌だった。
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#M(プロフ) - 初めまして。楽しく拝見させていただいてます。是非、2以降のパスワードを教えていただけると嬉しいです。よろしくお願い致します。 (4月29日 19時) (レス) id: f9e2a1b66a (このIDを非表示/違反報告)
リエ(プロフ) - はじめまして。楽しく素敵な作品で一気読みしました。続きが気になるので、よろしければパスワードを教えていただきたいです。 (4月6日 7時) (レス) @page50 id: 3e6db03f03 (このIDを非表示/違反報告)
ろん(プロフ) - 初めまして。とても惹かれる作品で一気読みしてしまいました!!!もし可能でしたら、続きのパスワードを教えていただきたく思います!お待ちしております。 (3月24日 23時) (レス) id: 4ab3d6e2fc (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品で楽しく読まていただいております。続きが気になるのでよろしければ、パスワードを教えていただきたいです!よろしくお願いいたします。 (1月14日 13時) (レス) id: 0f292486a4 (このIDを非表示/違反報告)
flover(プロフ) - 初めまして。とても楽しく作品を読ませていただいております。何度か読み返しており、続きが気になりました。もし宜しければ、パスワードをお教えいただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。 (1月3日 19時) (レス) id: aeaa3e44b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2019年10月27日 16時