雨降る夜に待ち合わせを【桃】 (ページ21)

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「どうぞ」
　
　
　
　
　
『おじゃまします』
　
　
　
　
　
家に人をあげたのなんていつぶりだろう
　
　
　
　
ここに住んで約5年くらい経つのにまるで生活感のない部屋
　
　
　
　
散らかってないのは良しとしても、あまりに殺風景でなんだか恥ずかしくなってくる
　
　
　
　
　
　
『神田さんってテレビ見ないんですか？』
　
　
　
　
何も特徴のない部屋を見渡して彼は言う
　
　
　
　
「ここに越してからは見てないですね」
　
　
　
　
” だからか、”と呟くように言った小瀧さんの言葉には反応はせずにいた
　
　
　
　
「すみません、何もない部屋で。適当に座っててください、すぐご飯用意します」
　
　
　
　
滅多に人に作ることのない料理
　
　
　
さて、どうしたもんか
　
　
　
張り切りすぎて作ったところで引かれちゃったら嫌だし
　
　
　
あ、カレー、昨夜の残りのカレーがある
　
　
　
決まりだ
　
　
　
　
　
　
　
『ん～、なんかカレーのええ匂いがする』
　
　
　
　
「お待たせしました～、どうぞ」
　
　
　
　
『わー！美味そう！ありがとうございます、いただきます！』
　
　
　
　
うまいうまいと眉毛をハの字にして口いっぱいに食べる姿がなんとも可愛らしくて
　
　
　
つい笑ってしまった
　
　
　
　
「っふ、」
　
　
　
『ん？』
　
　
　
「ん？あ、いや、ごめんなさい、なんだか可愛らしくてつい」
　
　
　
『ちょ、恥ずかしいやないですか～、あんま見んといてくださいよ』
　
　
　
「ごめんなさい(笑) あ、飲み物忘れてた、麦茶でいいですか？」
　
　
　
『はい！すんません』
　
　
　
　
　
なんか可愛いなやっぱり
　
　
あんな凛々しい顔して、口いっぱいにご飯詰め込んで食べて
　
　
わんぱくな子供みたい
　
　
　
　
ちょっと浮かれ気分で麦茶の入ったコップを持ってテーブルへ
　
　
　
そのとき盛大にこけてしまった
　
　
　
「っ！」
　
　
　
『っ！？あぶなっ！』
　
　
　
　
手に持っていたコップは空に
　
　
　
　
中にあった麦茶は小瀧さんにかかっていた
　
　
　
『っ・・・・・・・・・』
　
　
　
「あー！ごめんなさいごめんなさいごめんなさい！どうしよ、タオルっ」
　
　
　
やってしまった・・・・
　
　
　