雨 ページ6
Aは表情を固くした。
「宿儺という爆弾を抱えていても己は有用であると、そう示すことに尽力してください」
サングラス越しに七海の切れ長の目と目が合う。
一級呪術師、七海建人がそこにいた。
Aは俯き、拳を握る。
「あたしが弱くて使えないことなんて、ここ最近嫌という程思い知らされてる」
少年院で、Aはなにもできなかった。
なにもできずに、恵を殺しかけた。
「でもあたしは強くなるよ」
だから決めたんだ。
「言われなくても認めさせてあげるからさ」
強くなると。
もう二度と、あんな思いはしたくないと。
「もうちょい待っててよ」
「いえ、私ではなく上に言ってください」
「あ、ハイ」
△▽△▽
「……雨だ」
Aと七海は高専の裏口で並んで空を見上げていた。
万が一にもAが生きていることを知られてはならないため、正門からではなく裏口から出ることを五条から強く言い含められていた。
この一ヶ月間、ほとんど地下の部屋から出ていなかったAは久しぶりの外の空気に心躍らせていたが、生憎の雨にしょん、と眉を下げた。
「虎杖さん、傘は?」
天気予報で前もって知っていたのか、黒い傘を片手の七海は隣のAを見下ろした。
Aは首を横に振る。
「最近外に出てなかったから、傘とか持ってない。でもこんくらいの雨なら大丈夫だよ! あたし頑丈だし」
伊地知が待機してくれている駐車場まではここから数分の距離だ。それくらいの間雨に当たっていてもなにも問題はない。
自信満々に言い切るAに七海は「ダメです」と一言きっぱりと言った。
「君のタフさは五条さんから聞いていますが、雨に濡れてしまってはいざというときの動きに制限がかかります」
七海はバサッと傘を広げた。
「高専のふもとにコンビニがあったはずです。そこでビニール傘を買いましょう」
「でも」
「どうぞ、入ってください」
当たり前のように傾けられた傘。
Aは「え」という単音を発し、動きを止めた。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時