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正しい死って? ページ42

「奴の術式は他人の魂に干渉する。君が領域に侵入したことで宿儺の逆鱗(たましい)に触れてしまったのでしょう。おかげで助かりました」

Aはゆるゆると首を横に振った。

「あたしはなにもしてないよ。宿儺の気まぐれだ」

冷えた頬に手を添える。体が芯から冷えていた。唇も、頬も、手足も冷えていることにAはようやく気づいた。

「……ナナミン、あたしは今日、人を殺したよ」

見殺しにしてしまった。
この手でかけてしまった。

たとえそれが、仕方のないことだったとしても。己の身を守るためのことだったとしても。
この手は、穢れてしまった。

血に汚れてしまった。

不意に、温かな大きな手が肩に乗る。

「嫌なら突き放しても構いません」

遠慮がちにAの体は引き寄せられた。
抗うことなく、Aは力に従うように七海の胸の内におさまった。

心音が聞こえる。

規則正しく動く心臓。
二人分の鼓動が重なり、Aの中で響いていた。

「人は死ぬ。それは仕方ない」

まぶたを伏せ、Aは七海に身を委ねる。

「ならせめて正しく死んでほしい。そう思ってたんだ。だから、引金を引かせないことばかり考えてた。でも、自分で引金を引いて、わかんなくなったの」

心の中の疑問が、こぼれた。

「正しい死って、なに?」
「……そんなこと私にだってわかりませんよ」

答えなど、ないのかもしれない。
見つけないほうがいいのかもしれない。

「死は万人の終着ですが、同じ死は存在しない。それらをすべて正しく導くというのはきっと苦しい。私はおすすめしません」

桜色の髪を見下ろす。

そう言っても、彼女はきっとやるのだろう。
苦しみ、もがきながらも、正しい死を目指して。

「死なない程度にしてくださいよ」

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(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年1月6日 0時

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