自閉円頓裹 ページ37
ころり、と転がり出てきた三つの小さな改造人間。
七海がAを守ろうと動くより早く、それらは人の形に戻ると一斉にAに襲いかかってきた。
足元にまとわりついてくる呪霊たち。
まるで子どものようなそれらを蹴ることもできず、Aは逃げるようにして渡り廊下の屋根に跳んだ。
体勢を整えたAは真っ先に飛び込んできた呪霊の顔を掴み、動きを止めようと地面に押しつける。もぞもぞと動くそれは、微かな声をその口からこぼした。
「あ……そぼ」
握りしめた手が下がる。
腕を噛まれ、足に絡まり、転がったAの上にヨダレを垂らした呪霊が乗った。
「お……がい」
おねがい
ころして
「次はアンタと戦わせようと思うんだ。今度は泣いちゃうかな？」
一瞬油断した。
真人の巨大化した腕に壁にぬいつけられ、身動きの取れなくなった七海は、しかしその目に諦めを浮かべてはいなかった。
「現実と理想のすり合わせができていない馬鹿なガキは」
「それは違います」
不意に七海の目に踊る怒り。
「彼女は今まさにそのすり合わせの真っ最中。どちらかと言えば――」
そして、嘲り。
「馬鹿はあなたです」
七海の頭上の窓ガラスが割れた。降ってくる破片と人影。桜色の弾丸は七海を縫いつけている真人の腕に命中する。
Aの顔はなにかを堪えるように歪んでいた。
殺してきた。人を。
真横からの殺気に真人は流れるように横を見る。鉈を構えた七海だ。
彼の術式は把握している。インパクトの直前に形を変え――
ゴギュギッ、と骨が砕ける音がした。
Aの拳が深く深く真人の顔面にめり込む。
吹き飛んだ真人を迎え撃つように七対三の打撃がぶち当たる。
身代わりを作る隙もない。
――あぁ、なんて。
――なんて新鮮なインスピレーション。
これが。そう、これこそが。
真人の顔に微笑が浮かんだ。
死か。
今なら、できるよね。
「領域展開」
自閉円頓裹
突如現れたいくつもの手に体を押された。
真人のほうへ行こうと走っていたAは、地面を這うようにして広がる手に行く手を阻まれる。
「ナナミン！！」
手に包みこまれるように、七海の姿が見えなくなった。
暗闇の中、七海はクソっ、と言葉を吐き捨てる。
あまりにも穏やかな微笑みをたたえた真人は優しく声を紡いだ。
「今はただ、君に感謝を」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 709人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
