冷静になれ ページ36
冷たい手で頬をサッと撫でられたような感覚がした。ぐちゃぐちゃになっていた視界が一気に晴れ、冷えたなにかが喉を通って腹に落ちる。
己を鼓舞するように頬を叩き、立ち上がった少女を七海は横目で見た。
「説教はあとで。現状報告を」
「二人……助けられなかった」
険しい顔で俯いたAの頬に、ほどけた髪がかかる。
どこまでも他人のことを考えるAに、七海は鉈を握りしめる手に力を込めた。
「まずは君の体のことを」
「あたしは平気。いっぱい穴空いてるけど」
ぐっ、と唇の端についた血を拭い、答えるA。
七海はため息とともに小声で「平気の意味……」とつぶやく。おおよそ、彼女は平気とは言いがたかったからだ。
制服は至るところに穴が開き、両手にもいくつも穴が貫通している。ニーハイソックスは所々が破け、土と血がついていた。
だが本人はドーパミンのおかげで痛みを感じていないのだろう。まるで気にしていない。
「あと学校の人らは全員体育館でぶっ倒れてる」
腕を元に戻しながら真人はへらりと笑った。
「なんだ、ピンピンしてるじゃん。七三術師。お互い無事でなによりだね。ハグでもするかい?」
相変わらずなにを考えているかわからない薄ら笑いに七海は内心舌を打つ。
しかし、すぐに目を見開いた。
じわ、と真人の鼻から血が垂れたのだ。
「虎杖さん、あの鼻血は」
「え、あたしが殴った」
「いつ」
「いっちゃん最初」
「奴の手に触れましたか?」
「うん」
「……私の攻撃は奴には効きません」
七海の矢継ぎ早の質問に答えていたAは最後の一言に、ぎょっと目を見開いた。
「は!? なん」「理由は説教のときに」
かぶせるように遮られてしまい、Aは大人しく口を閉じた。
「しかし動きは止められます。お互いが作った隙に攻撃を畳み掛けていきましょう」
Aには真人の攻撃は効かない。
Aを殺せない理由がある。
どちらにせよ、こちらには好都合。
サングラスの奥の目を光らせた。
「ここで確実に祓います」
「おう!!」
二人は同時に動いた。
真人から繰り出される変形の攻撃を交わしながら、交互に打撃を打ち込む。
地面が凹むほどの威力の攻撃が放たれた。しかしそれを体を小さくして交わした真人は、おえっ、と嘔吐いた。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時