すがりつく手は地面に落ちた ページ33
「……A」
ぐいっ、と制服の裾が引っ張られる。
Aはゆっくりと下を見た。
「な、ん、で……?」
助けを乞うように伸ばされた順平の両手は、力を失い、ずるりと落ちた。
彼の目には涙が溜まっていた。
「あっ、もう死んだ?」
笑いすぎて流れてきた涙を拭いながら真人は言う。
Aは浅く息を繰り返していた。
白くなっていた思考が、今度はどす黒い赤色に染まっていく。
バケツをそのままひっくり返したような、荒々しい赤。
「ちょっと乱暴に形変えたからね。こんなもんかぁ」
ドゴォッ――!
真人の顔面のど真ん中に、Aの握りしめた拳がめり込んだ。
凄まじい勢いで吹っ飛ばされた真人は階段にぶち当たる。踊り場に着地し、薄く笑った。
「残念。効かないよ」
赤くめくれ上がった拳を握りしめるAを見下ろす。
「魂の形を保ってい――」
ボダボダッと真人の鼻から大量の血液が噴き出した。
鼻から下の顔半分が赤くなっていく。口の中に不快な鉄の味が広がった。
(どういうことだ!? 魂の形ごと……叩かれた?)
それを拭い、真人は一瞬考える。
そしてある結論に辿りついた。
虎杖Aは器。
常に肉体の中に自分以外の魂がある状態。
だから自然に知覚しているのだ。
魂の、形を。
体の奥から溶岩のように噴き出す感情をAは自覚していた。
無意識のうちに息が荒くなり、吐き出す息は熱を帯びていた。思考は赤く染まり、なにも考えることができない。
だがそれは、気持ちがいいものだった。
なにも考えなくていい。
なにも考えず、拳を振るえばいい。
今まで、あたしの口から出た言葉はすべて嘘だったんじゃないかと思えるくらい。
腹の底から出た本音。
Aは血走った目で、呪霊を見上げた。
「ぶっ殺してやる」
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時