検索窓
今日:10 hit、昨日:3 hit、合計:202,096 hit

すがりつく手は地面に落ちた ページ33

「……A」

ぐいっ、と制服の裾が引っ張られる。

Aはゆっくりと下を見た。

「な、ん、で……?」

助けを乞うように伸ばされた順平の両手は、力を失い、ずるりと落ちた。
彼の目には涙が溜まっていた。

「あっ、もう死んだ?」

笑いすぎて流れてきた涙を拭いながら真人は言う。

Aは浅く息を繰り返していた。
白くなっていた思考が、今度はどす黒い赤色に染まっていく。
バケツをそのままひっくり返したような、荒々しい赤。

「ちょっと乱暴に形変えたからね。こんなもんかぁ」

ドゴォッ――!


真人の顔面のど真ん中に、Aの握りしめた拳がめり込んだ。

凄まじい勢いで吹っ飛ばされた真人は階段にぶち当たる。踊り場に着地し、薄く笑った。

「残念。効かないよ」

赤くめくれ上がった拳を握りしめるAを見下ろす。

「魂の形を保ってい――」

ボダボダッと真人の鼻から大量の血液が噴き出した。
鼻から下の顔半分が赤くなっていく。口の中に不快な鉄の味が広がった。

(どういうことだ!? 魂の形ごと……叩かれた?)

それを拭い、真人は一瞬考える。
そしてある結論に辿りついた。

虎杖Aは器。
常に肉体の中に自分以外の魂がある状態。
だから自然に知覚しているのだ。

魂の、形を。


体の奥から溶岩のように噴き出す感情をAは自覚していた。
無意識のうちに息が荒くなり、吐き出す息は熱を帯びていた。思考は赤く染まり、なにも考えることができない。
だがそれは、気持ちがいいものだった。

なにも考えなくていい。
なにも考えず、拳を振るえばいい。




今まで、あたしの口から出た言葉はすべて嘘だったんじゃないかと思えるくらい。
腹の底から出た本音。




Aは血走った目で、呪霊を見上げた。



「ぶっ殺してやる」



.

叩き潰す→←幼魚と逆罰 ー死ー



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (210 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
709人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2021年1月6日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。