わからない ページ29
ぐんっと後ろへ強く引っ張られる。
気づくと順平は廊下の窓を突き破り、自転車置き場の屋根に背中から落ちていた。
咄嗟に式神をクッションにし、衝撃を逃す。
体勢を立て直したときには、すでにAが順平を追って窓から飛び降りていた。
「なんで、なんで邪魔をするんだ！！」
空中で着地するために体を縮めるA。
それを見上げ、順平は目を開いた。
空中。
身動きがとれない。
潰すなら――着地寸前。
Aの伸ばされた両足に澱月の針が襲いかかる。
しかし、両手に呪力をこめたAは、勢いよく地面に拳を振り下ろした。
弾かれる針。揺れる足元。
順平はバランスを崩し、一瞬意識が逸れた。
「順平がなに言ってんのか、さっぱりわかんないよ」
その一瞬を見逃すはずもなく。
Aは駆けた。
「それらしい理屈をこねたって、お前はただ」
式神使いは術師本人を叩け。
そう、五条に教わった。
両手に溜めていた順平を右拳に集中させる。
「自分が正しいって思いたいだけでしょ」
穢れなき飴色の瞳は、拳と共に順平を貫いた。
再び体が宙を舞い、廊下に放り出される。
背中をしたたかに打ちつけた順平は、咳き込みながら這いつくばった。
「順平の動機は知らない。なにか理由があるんでしょ？」
粉々に砕け散った窓ガラスの破片ごと、手を握る。
小さな痛みが手のひらに走った。
「でもそれは本当に、あの生活を捨ててまでのことなの？」
Aの声が体を揺する。
「人の心がまやかしなんて、あの人の前で言えんの！？」
鼻の奥がツンと痛くなった。
しまいこんでいた感情が、溢れ出しそうになる。
鍵をかけていたはずの蓋が、がたがたと揺れだした。
人に、心なんてない。
「ないんだよ！！ 人に、心なんて……」
そうでなくてはならない。
そうでなくては、そうでなきゃ――
「そうでなきゃ、僕も母さんも、人の心に呪われたって言うのか」
溢れ出した涙をそのままに、順平は式神を呼び出した。
「もう、なにが正しくて、なにが間違ってるのかも……わからないんだ」
飛んだ針が、Aの右肩に深々と突き刺さった。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
