だれに言い訳しているの ページ28
「澱月!」
順平の掛け声と共にくらげが順平の体を包み込んだ。
場所は体育館から廊下へ。
呪力を宿した右拳を順平に向かって振り下ろそうとしたAだったが、その打撃はくらげに飲み込まれてしまった。
あのくらげの中に入られると打撃は効かない。
「もう一度言う」
聞いたことのない低い声が廊下に響いた。
「引っ込んでろよ、呪術師。……関係ないだろう!」
「それはお前が決めることじゃない!」
吐き捨てられた言葉にAは再び拳を握りしめて重心を落とす。
明らかな拒絶の声。
Aを見る目は虚ろだ。
その目を向けられるだけで、Aは今にも泣きそうになった。
「無闇な救済に……なんの意味があるんだ」
順平の背後のくらげがぴたりと動きを止めた。
「命の価値を履き違えるな!!!」
腹の底から絞り出された絶叫だった。
Aの全身を打つ絶叫だった。
順平の声に呼応するように、くらげの無数にある触手から凄まじい速さで針が飛び出した。
瞬く間にそれはAを覆い隠す。
「霊長ぶっている人間の感情、心は、すべて魂の代謝、まやかしだ!」
ただ一人、順平を理解してくれる彼の言葉をそのままAにぶつける。
針に覆われたAは声すら出さない。いや、出せない。
「まやかしで作ったルールで僕をしばるな」
この針には毒が含まれている。
呪力から精製した毒を式神の触手から分泌するのだ。あのサイズの式神から出された毒に触れれば、人間などひとたまりもないだろう。
――順平、才能あるよ。
そんなこと、はじめて言われた。嬉しかった。体が震えた。
彼の言うことはすべて正しいのだと、そう思えた。
「奪える命を奪うことを止める権利はだれにもない。そこで寝ててよ。僕には戻ってやることがある」
母の仇をとらなくてはならない。
Aに背を向けた順平は、ガッと襟元を掴まれて止まることを余儀なくされた。
「だれに言い訳してんだよ」
聞こえるはずがない声だった。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時