人間 ページ12
「虎杖さん、どうぞ」
「……ありがとう」
「…………」
「…………」
「風邪、引きますよ」
七海はAにタオルを渡す。
だが、彼女は俯いたままタオルを使おうとはしなかった。
外はまだ雨が降っていた。
呪霊を瀕死まで追い詰め、そこで気づいた違和感。
詳しいことを調べてもらうために呪霊を二体とも高専の家入のもとへ送った。
今は調査結果を待っているところだった。
雨を吸ったAの長い髪は顔に影を落としている。
タオルを握ったまま動かないAに七海はため息をつき、そのタオルをするりとAの手から取った。
そこでようやくAの顔が上を向く。
「君の髪は長いのですから、きちんと拭かなくてはいけません」
七海はAの頭にぱさりとタオルをかけ、優しく髪を拭き始めた。
されるがままのAはぼんやりと七海を見つめ、右に左にと頭を揺らしている。
「ごめん」
喉になにかが詰まったように、声はしゃがれていた。
自分で拭くよ、と呟く。
七海はそれに頷き、自分のジャケットとAの着ていた制服のジャケットを片手に、ハンガーにかけた。
これで少しでも乾くといいのだが。
ソファーに座り、サングラスについた水滴を拭う。
ちらりとAのほうを見ると、髪の隙間から覗く頬は青白く、唇は真っ白になっていた。
冷えか、またはそれ以外か。
七海は机の上に置いたスマホに目を移した。
瞬間、着信を告げる音色が響いた。
びくっ、とAの肩が動く。
七海は手を伸ばして画面の通話ボタンを押した。続いてスピーカーもONにする。
[結果を先に報告するよ]
「はい。お願いします」
七海とAの目がスマホを見つめる。
電話口で家入が息を吸ったのが聞こえた。
[お前たちが戦っていたのは――人間だ]
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時