逕庭拳 ページ11
拳を振り下ろしてきた呪霊を避け、Aは構えた。
七海の話に集中していたせいで完全に油断していた。
「よそ見とは感心しませんね」
「話しかけたのだぁれ!?」
元はと言えば七海が話し始めたのが悪いのだ。
食いつきがちにツッコんだAは心のざわめきを静めるように息を吐いた。
ようやく五条との特訓の成果を見せることができる。
目を開き、右足を一歩引いた。
握った両拳に熱が宿る。
呪力が両手に集中するのを感じる。
少年院で経験したものと同じだった。
Aの呪力は遅れてやって来る、と五条は言っていた。
拳が当たったと認識した直後に呪力がぶつかってくる。つまり、一度の打撃に二度の衝撃が生まれる。
両手を広げて襲いかかってきた呪霊のど真ん中。
心臓があるだろう付近にAは振りかぶった拳を思い切りめり込ませた。
どんっ、と呪霊の体を鈍い衝撃が襲う。
次の瞬間、放たれた呪力が心臓を貫いた。
逕庭拳
Aは拳についた血を振って払った。
心臓を貫通された呪霊はまだ意識があるのか、地面でのたうち回っている。
自分の技が呪霊に通じたことに満足そうな笑みを浮かべたAはその呪霊に近づいた。
またなにかある前にトドメを刺さなければ。
逃げられたりしては面倒だ。
右拳に再び呪力をためる。
「虎杖さん!」
振り下ろされそうになった拳は七海の声によって止められた。
初めて聞く七海の張った声はわずかな焦りと、疑問に満ちていた。
首を傾げながらAは七海を見る。
「どったの?」
「トドメを刺すのは待ってください」
「……なんで?」
七海は持っていたスマホの画面をAに見せた。
「私の相手を撮影しました」
差し出されたスマホを横から覗き込む。
そこには腕時計をつけた呪霊の左腕が映っていた。
その写真にAは「……え」と疑問の声をこぼす。
「呪霊ってこういうの写んないんじゃ……」
「落ち着いて聞いてください」
七海の手がAの肩に乗る。
降り続ける雨の音がやけに耳についたのを覚えている。
「私たちが戦っていたのは――」
それでも、雨音は七海の声を覆い隠すには足りなかったらしい。
Aの頬を、雨に混じって冷や汗が滑り落ちた。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時