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"ショック"と言うよりは、茫然とした表情の武道に、直人は気不味さを覚える。
武道「…俺、ずっと不思議だったんだ。俺は一人っ子のはずなのに、なんで過去には姉ちゃんがいるんだろうって。」
武道の言葉に直人は目を見開き、下を向いていた顔を勢い良く上げる。
武道はおもむろに直人の腕からファイルを抜き取ると、先程の記事が挟まれていたページを開いた。
武道「姉ちゃん…死んでたんだな……でもなんでだ?過去の俺は、決して姉ちゃんを嫌ってたわけじゃない。なのになんで、俺の記憶には姉ちゃんがいないんだ?」
直人「えっ?武道君、Aさんの事覚えてなかったんですか?」
小さく頷く武道に、直人は顎に手を当て思考を巡らせた。
暫し考え、直人は自身の見解を口にする。
彼の考えはこうだ。
実は事件当時、Aは武道と共に歩いている所を襲われ、武道自身も怪我をしたのだ。
恐らくそのショックと、姉を救えなかったという後悔から、記憶に蓋を閉じてしまったのではないか、という事らしい。
直人「姉の話だと、当時Aさんの話題はタブーになっていたみたいだし、武道君が何事もなかったかのように明るく振る舞っていたのは、悲しさを隠す為だったんじゃないかと思われていたみたいですから…」
武道「そうだったのか…ていうかなんで直人がこの記事取っといてんだよ?」
直人「別にいいじゃないですか……初恋の相手だったんですよ。」
武道「…誰が?」
直人「誰って、話の流れ的にAさんしかいないじゃないですか。」
この数秒後、大声を上げた武道が直人に怒られたのは言うまでもない。__
「武道?」
Aの声に、武道はハッと顔を上げた。
不思議そうに自身を見つめるAが目に入り、武道はゴクリと息を飲む。
武道「姉ちゃん…」
「ん?」
武道「俺、絶対に姉ちゃんの事守るから!だから…絶対一人で外を出歩かないでくれ!」
「武道…」
Aは小さく微笑み、武道の頬に手を添える。
「今日はしっかりした方の武道だね。」
武道「え?」
「ううん……ありがとう、武道。」
触れていた手が離れ、武道は少しばかり寂しさを感じる。
そして前を歩く姉の後ろ姿を見て、武道は拳を強く握り、今一度彼女を助ける気持ちを強くさせたのだった。
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子持ちししゃも(プロフ) - 藍璃さん» ありがとうございます!頑張って更新します! (4月25日 21時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
藍璃(プロフ) - 好きです!!!!更新待ってます!!!! (4月25日 18時) (レス) id: f0cad43b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 分かりました、更新はゆっくりでいいですよ (3月16日 8時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - ユノンさん» コメントありがとうございます。すみません、無惨様その他の過去の鬼達は出る予定がありません😭記憶の一部とかには出す予定ではありますが、夢主は半天狗と接触してないという設定で考えていたので、彼は出てきません😭ほんとすみません😭 (3月15日 22時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 子持ちししゃもさん» 半天狗の喜怒哀楽の鬼を出して欲しいです! (3月15日 15時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2023年10月19日 23時