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Aは気付くと、水の中を漂っていた。
水と言っても冷たくなく、かといって温かいわけでもない。
ただ口から漏れる空気や衣服の揺れが、自身を纏っているのが水だという事を教えてくれた。
(…あぁ、自分は死んだんだ。)
尊敬する師や愛する弟達、御館様、同志__Aは瞼を閉じ、それらを思い浮かべる。
_まだやらなければいけない事は山ほどあった。
_"あの子達"が試験に合格し、帰ってくる時出迎える約束をしたのに、守れなかった。
_親代わりの師よりも先立つなど、あってはならない事だった。
_そうだ、"あの子"は無事に帰れただろうか?
_…"あの子"?
あの子とは誰だろう、とAは閉じていた瞼を開ける。
_そうだ…私は死んで、そして生まれた。
_泣き虫で不器用な、優しいあの子。
_守らなければと逃げるように言ったのに、私の手を掴んで助けてくれた…大切な、私の弟。
「…武道。」
Aが呟いた途端、暗闇だった辺りは真っ白に変化した。
_____
Aが目を開けると、見た事のない天井が視界に入った。
起きようと身体を動かすが、背中に痛みを感じ、彼女は小さくうめき声を上げる。
炭治郎「お姉さん、大丈夫ですか?」
目が覚めたことに気付いた炭治郎は、Aの側に寄り添い身体を起こさせる。
「キミ、は…竈門ベーカリーの?」
炭治郎「はい、竈門炭治郎といいます。ここは俺の先生の家で、あそこにいるのが…」
そう言って炭治郎は、開けたままになっている襖の向こうで座る鱗滝に目を向ける。
だがすぐに、匂いを感じて視線をAに戻した。
Aの瞳は大きく見開かれ、涙で頬を濡らしていた。
炭治郎(嬉しいと、申し訳ないという匂い…?)
炭治郎が感情を読み取ると同時に、Aは布団から飛び出し居間へ駆け出す。
側に武道がいるにも関わらず、Aは真っ直ぐと鱗滝を目掛けて飛び付いた。
鱗滝はそれを容易に受け止めると、子供のように声を上げて泣くAを抱き締めた。
「う、あ…し、しょ…師匠ぉ、ごめんなさい…ごめんなさいぃ!」
鱗滝「良いんだ…良いんだよ…おかえり、A…」
鱗滝の面の隙間からも涙が流れており、それを見た武道は酷く困惑した。
ふと肩を叩かれ武道が振り返ると、優しい顔をした炭治郎が外を指差していた。
彼は禰󠄀豆子にも目配せすると、二人を連れて静かに外へ出る。
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子持ちししゃも(プロフ) - 藍璃さん» ありがとうございます!頑張って更新します! (4月25日 21時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
藍璃(プロフ) - 好きです!!!!更新待ってます!!!! (4月25日 18時) (レス) id: f0cad43b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 分かりました、更新はゆっくりでいいですよ (3月16日 8時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - ユノンさん» コメントありがとうございます。すみません、無惨様その他の過去の鬼達は出る予定がありません😭記憶の一部とかには出す予定ではありますが、夢主は半天狗と接触してないという設定で考えていたので、彼は出てきません😭ほんとすみません😭 (3月15日 22時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 子持ちししゃもさん» 半天狗の喜怒哀楽の鬼を出して欲しいです! (3月15日 15時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2023年10月19日 23時