松野家の隣人ちゃん2 (ページ5)

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『じゅーしまつー』

「なに?Aちゃん」

『教室一緒いこ…』

「マッスルマッスル！」

保健室にまだいたいとごねるイッチを
引きずって教室に戻ると休み時間だった｡

痛む頭を冷やしながら職員室へ行き
担当の先生に課題を忘れたことを伝え
ふらふら歩いてたところで五男に会った｡

「Aちゃん頭大丈夫?」

『どいつもこいつも…』

「すっげー音してたよ！」

『まぁ冷やしてるから大丈夫だよ』

「おぶろうか?」

『次倒れたらたのんます』

学ランの袖からはみ出たジャージの
袖で口許を押さえて私の顔を見詰める｡

彼の大きな目に見詰められると
どうにもくすぐったくて堪らない｡
今もほっぺあたりがうずうずする｡

『そう言えば十四松はどうしたの?』

「ぼく?」

『うん』

「いやぁ…照れマッスル」

『何も言ってないよまだ』

きゃーっ！…と頬をほんのり染めて
長い袖で顔を隠す姿はまさに女子｡
こういうとこかわいいから五男はずるい｡

「ぼく､Aちゃん迎えに行ったんだけど」

『え…あ､私?』

「うん､保健室いなくて」

『うわぁ…ごめんね』

申し訳なさが一気に込み上げる
私の頭をよしよし撫でてくれる｡

あ…待って後頭部は勘弁して……｡

「色んなとこ探したんだけど」

『申し訳ない…』

「調理室とか事務室とか女子トイレとか」

『おいちょっと待て』

「だから会えて嬉しいっす！」

彼の口の中のハートがぴくぴく動いた｡

あまりに満面の笑みで私を見るから
さっきの発言も空耳に思えてくる｡

『じゅっしありがとね』

「うん！マッスルマッスル！」

『イッチにもらったメントスあげる」

「わー！」

袖から出された手にメントスを落とす｡
目をきらっきらに輝かせて口に放る彼｡
うまーい！と素直な感想がまたかわいい｡

「あーぁ教室行きたくないなぁ…」

『戻らなきゃ怒られちゃうよ』

「Aちゃん一緒ならいいよ､ぼく」

『えー…私怒られるのやだもん』

「だよねぇ」

私の手にちょんっと触れた手を掴むと
後ろにいた十四松が私の隣にきた｡

案外身長が高い｡昔とは違うんだなぁ…｡

『十四松背ぇ高くなったね』

「Aちゃんちっちゃいね！」

『おこるよ』

「きゃーっ！」

チョロちゃんみたく私の頬に触れる｡
そしてそのまま口角を上に上げた｡

一緒に上がってく彼の口角｡

「ふふっ…変な顔」

『ちょっとやだもう…』

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