田中洸希の憂鬱日記

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俺は昔テコンドーで賞を取ったことがある。全国でだ。



痛そうにお腹を抱える男。
倒れてる男。
俺を見て怖がってる男。


胸ぐらを掴んだままずっと殴り続ける。エンドレスだ。たとえ意識を失っていたとしても、構わない。



どれほど殴っても、どれほど痛めつけても気が済まなかった。





『…や、洸希』


洸希「…」


『ダメ！！』





殴っちゃダメ！と俺を止めるA。



…ヤー、なんで止めるんだよ
お前を、泣かせたやつだぞ。


最低な奴らなのに、なんで止めるんだよ。







『…やめて…洸希』





またその綺麗な瞳から、涙が零れ落ちた。
俺の名前を呼びながら。



俺はハッとして、今殴ってる男の胸ぐらを離した。






洸希「……ごめん、A。」



『……』



洸希「……服」



『…うん。』







俺が怖い思いさせてどうすんだよ。

落っこちてる服を拾い上げ、Aに差し出す。






『……焼肉、行こっか』



洸希「…バカなの？行けるわけないじゃん、状況考えて」



『…楽しみにしてたのに』




洸希「それより痛いところはない？ケガは？」




『大丈夫だよ、心配性だなあ笑』




洸希「そっか。


あのさ……A。」




『…なに？』




洸希「俺って、Aのなに？」




『なにって…？』




洸希「Aにとって、俺は頼りない？」








急にどうしたの？と俺に尋ねるA。
俺も俺がわからない。
どうしちゃったんだろ、ほんとに。



『洸希』



洸希「岡 心菜」



『…っ！』



洸希「あいつから陰湿なイ ジ メを受けてたって聞いたんだけどほんと？」



『…それは』



洸希「何かあったら俺に言ってねって言ったよね？だけどAは何にも言わなかった。何にも。」






俺は何も知らないでノコノコと学校に来て、授業うけて、寝て、お昼食べて…何も知らないでAに笑いかけてた。毎日、楽しいねって。






洸希「…俺って、必要ない？」



『…大切な存在』



洸希「…」



『洸希は私にとって大切な存在だよ。洸希がいたから毎日が楽しくて、どんなことがあっても洸希がいるからって頑張れた。近くに居たんだから、わかるでしょ？』



洸希「…わからない。何も言わないじゃん」




『言わなかったのは、俺のせいでって自分を責めて欲しくなかったし、洸希を失いたくなかったから。』



だって、私たち親友じゃん

そうやって笑うAを、体が勝手に思いっきり抱きしめていた。

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