・ 013 ページ16
.
陽だまりの彼女を読み終えたのは、結構早くて10月の後半に入った頃だった。
朝の読書よりも、朝の自習の方がいいのにな、って思いながら松村くんから教えて貰ったウルルの森の物語を読み始める。
それがもう、めっちゃ、面白かった。
美波｢A〜？もう授業始まるけど？そんな面白い？その本｣
ニヤニヤしながら言ってくるから恥ずかしくなってちょっと美波を睨んだ。
美波｢こわ笑｣
『もう、普通に声かけてよ』
美波｢はいはい｣
ニヤニヤしたまま美波が前を向いて、松村くんが嬉しそうに後ろを向いてきた。
松村｢それ、面白い？｣
『うん、面白い』
松村｢だよね。好きだと思った｣
活字なんか嫌いなのに、貴方のおかげで今も本を読むようになった。
でも不思議ね。魔法？まるで呪いにかかったかのように本を読むと貴方を思い出す。
松村｢よかった｣
お昼休みも、続きが気になっちゃって本を読んでると嬉しそうに振り返って私を見守る松村くんと目が合った。
松村｢なんか、自分の好きな本を読んで貰えるって幸せだね｣
『えぇ、松村くんの幸せってこんなんでいいの？笑』
松村｢うん。…すごい幸せ｣
からかって言ったのに、松村くんの目は真剣で。
思わず黙ってしまった。
それでまたニコニコ笑った松村くんは机に置いてあった私のノートを手に取って自分のペンを持った。
松村｢じゃあもっと教えてあげる｣
開いたのは、ウルルの森の物語って書かれたページ。
その数行下にまた文字を書き始めた。
松村｢俺のとっておきなんだ｣
連なったのは某有名バンドの名前と曲名。
名前は聞いたことあるし、音楽番組で見るけど、そんな真面目に見たことがない人達だった。
松村｢おすすめする。…聴いてみて｣
分かった、って頷くと同時に先生が入ってきて前を向いた松村くん。
少し伸びた襟足にキュンとした。
今日の夜寝る前に聞いてみよう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 393人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つばさ(プロフ) - 今、こういった低評価で悩まされてる作者様が増えています。とても面白いのであまり気にせず更新して欲しいです。ちなみに７つめの原石…も読ませて貰ってます！七瀬様のペースでご無理なく！ (2021年9月3日 16時) (
レス) id: a84a28701a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七瀬
| 作成日時：2021年9月3日 0時
