氷 の 外 で

銀色の/Yuzuru [男主注意] ページ22

｢またお前の次...いい加減、羽生結弦には勝てないみたいに言われんの嫌なんだけど？｣

俺が控え室で嫌味ったらしく言えば、羽生はにこりと嬉しそうに笑う。
俺はそれを見てため息をついた。

羽｢ノービスの時からそうだったでしょ。絶対に勝たせてあげないから｣

王子様スマイルで話す羽生に、俺は本当によく覚えてるなぁなんて思う。
俺が最初にこいつに負けたのは全日本ノービスの時。

羽生が金を掲げる横で、俺は銀を首から下げていて。
嫉妬と羨望、さらにその後無神経に話しかけてきたそいつのことを俺はずっと忘れなかった。
その後の大会も顔を合わせる度に羽生は俺に話しかけてきて、俺を負かしていった。

｢弱気になってた頃もあったくせに｣
羽｢感謝してるって｣
俺が永遠に勝てないということを確信しているのか、大怪我をおって試合に出れない時なんからあっちから一方的に愚痴を吐いてきて。
それを押し返せるほどに無神経じゃなくて、ライバルの心の弱音を聞いたこともあった。

羽｢Aは俺に心開いてくんないよね｣
｢お前が俺に負けるその日まで永遠にない｣
羽｢そっちは羽生呼びなのに、俺だけ名前呼びだし｣
スルーを決め込んだ羽生は、そんなことを言って口を尖らせる。
｢そっちが勝手に呼んでんじゃん｣
羽｢仲良くしようよ〜。ここまでネチネチと着いてきたのAくらいだって｣
｢張り倒すぞ｣
スケート靴を仕舞い、手に持っていたペットボトルを振り上げた。

羽｢そんな価値にこだわんなくても、Aは世界王者の1番の存在なんだから大丈夫だって｣

うわめんどくさいこと言い出した。
なにを行ってんのか理解不明、俺はペットボトルでポコンと羽生の頭を叩く。
｢自分のこと世界王者って言うなムカつく｣

そう言ってくるりと扉のほうへと体を向けると、ぐいっと引っ張られた。
いつの間にかベンチを立っていた羽生の体にドン、と当たる。

羽｢いい加減ちゃんと考えてってば｣
俺これでも頑張ったんだからさ、と耳元で掠れた声がこだまする。
｢羽生、次これやったら投げるから｣
パシと彼の元から抜けて扉を開けて歩いた。

ムカつく、なにより鳴り止まない心臓がムカつく。

羽｢次何してやろっかな。いい加減振り向いてくれないかなー｣

彼は控え室でいたずらに笑っていた。

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長編予定のものですがボツりました。男主やっぱり楽しいですね、本職ですもん。

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