そこに愛はあるか/Yuzuru ページ17
「結弦、すごいなぁ」
テレビで何度も見たプログラムや雑誌とか見返して、改めてそう呟いた。
結「本人が横に居るんだから、こっち見ればいいのに」
さっきから構ってなかったからか、少し拗ねたように口を尖らせる本人。
...こんなに凄い人が、幼馴染みとは。
「ごめんごめん。でも、結弦の滑りが見れるのはこっちだからさ」
はは、と笑うと結弦はぷいと顔を背けた。
こうやって少し子供っぽいところは変わってない、かな。
昔はリンクで結弦のスケートを見ていたけど、今は気軽に見れるようなものじゃないし。
メディアに柔らかな王子スタイルで応じる結弦に、それを見て喜ぶ女のファンの人にちょっと嫉妬したり。
そろそろ結弦も彼女とか作ればいいのに。
「て、おーい結弦?ごめんって〜」
ずっと無言だから、私はつい心配になる。
結「...俺の滑り、見れるじゃん」
腕に埋めた顔、瞳だけを覗かせた。
「え?」
結「チケット取るって言ってんのに、来ないのはAだよ」
そう言ってまた顔を埋める。
女の子のファンの黄色い歓声が聞きたくないです、なんて言えるわけない。
「あはは...まぁ、ほら時間とか」
そこまで言うと、結弦は私の手首をパシッと掴んだ。
そして、瞳だけをこちらに向ける。
鋭く光る瞳は、獲物を狙うライオンみたいで。
結「俺がスケート続けられたのはAのおかげなのに、それを見てもらえないなんて本末転倒」
むすっとした声のまま、少し悲しそうに眉を下げた。
「私の...?」
というか、私のおかげってどういうこと?
私なんかしたっけ...なんて考え込む前に、掴まれたままの手首をぐいと引かれて唇が触れるか触れないかの辺りに結弦の顔が来る。
私は目を見開いて、思わず呼吸を止めた。
結弦の瞳はキラキラと光っている。
結「"結弦のスケート大好きだから"って、言ったじゃん」
「...覚えてない」
結「はぁ!?あの時僕がどんだけ我慢したとっ」
そこまで言って、結弦はハッと口を抑えた。
離れた顔と、離されてだらんと落ちる腕。
「我慢?」
結「Aの鈍感。僕はAが大好きだよって言いたかったのに、ほんと鈍感。ばーか」
腕で口元を抑えて、真っ赤な顔を隠すようにもう帰る!とソファを立ち上がる。
私は思わず服の裾を摘んで、待ってと引き止めた。
真っ赤な顔の結弦に見下ろされ、私はそんな結弦を笑顔で見上げる。
「私も、好きだよ」
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琥珀糖(プロフ) - ぬさん» リクエストありがとうございます。とても素敵なネタですね!頑張って書きます。これからもよろしくお願いします。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - astroyuzさん» コメントありがとうございます。主の性格には特に気を付けましたので、そう言って貰えると嬉しいです!これからもよろしくお願いします。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 昌磨君と幼なじみのスケーターさんでエキシビで昌磨君にプロポーズされる小説お願いします (2018年3月30日 8時) (携帯から) (レス) id: b271d24507 (このIDを非表示/違反報告)
astroyuz(プロフ) - 男主のお話がとても好きです。いい男なんだろうな、と楽しく拝読いたしました。ヒロイン嬢もおかわいらしく、癒やされました。この先の更新も楽しみにお待ち致しております。 (2018年3月28日 11時) (レス) id: afb95e6422 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - なほなりさん» コメントありがとうございます、気付くのが遅れて申し訳ございません!そう褒めてもらえるととても嬉しいです!これからよろしくお願いします。 (2018年3月16日 17時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀糖 | 作成日時:2018年2月25日 22時