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お盆に1日だけもらえたオフ。
旅行に行くにしても、どこも混んではるし暇や…
……あ、あるやん。行かなあかんところ。
「なぁ、おかん。あの人に挨拶せな。」
リビングでテレビ観とったおかんは、振り向く。
"あの人"
この季節になると、それだけで誰かわかってまう。
おかんは、
母「もう、そんな季節やねぇ…。綺麗な花買ってかなあかんわ。
はよ準備しぃ?車で待っとるから。」
そう、悲しそうに笑て、ジャージ姿の俺に言った。
車に乗れば、花屋に直行。花を買って、目的地に向かう。
そこから数十分。
山の奥に見えた墓地。
車から降りれば、空はあの日と同じ、雲ひとつない晴れ。
台風が過ぎてすぐのあの日、天気に反して川の流れは穏やかなんてもんやなかった。
ずっと後悔しとる。あの川の流れで、8歳の俺がどうなるかなんて、冷静に考えれば分かっとった筈なのに。
家族とのお出かけで舞い上がってた俺は、そんなん考えてへんかった。
案の定、波に脚をとられて溺れた。必死でもがいたけど、助かるわけあらへんくて。
そんな時助けてくれはったのが"あの人"
自分を犠牲にして、見ず知らずの俺を守ってくれはった。
俺が今の仕事を始めた理由の1つはこの事やったりする。
空の上におっても、あの時はありがとうございました、って伝わるような、大きな存在にならんとあかんかった。
"あの人"に伝えることができるんなら、辛いことやって乗り越えられた。
そんだけ、"あの人"は大きな存在。
でもやっぱり、1番あるんは、申し訳なさと悔しさ。
"あの人"も、自分の子供とそこに来とった。
俺より年下の女の子。
俺は、1つの幸せな家庭をぶっ壊した。
それは、一生背負ってかなあかんこと。
せめてもの償いとして、毎年、こうやって挨拶に来とる。
せやけど今年は、いつも誰もおらん筈の墓の前に、見覚えのある後ろ姿があった。
同じ墓やったんや、なんて思ったのも束の間。
「あの人の、墓の前や……」
おかんは、
母「そういえば、娘さん、丁度あんぐらいになるんとちゃう?あんたの2個下やって。」
そういえば、同じ、苗字や。
思い切って、声をかけてみる。
「平ちゃん?」
どうか、振り向きませんように。
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翡翠(プロフ) - まさなさん» コメントありがとうございます!覚えていてもらえて嬉しいです……!!いつも楽しみに読ませていただいてます。これからも更新頑張ってください〜! (2019年11月23日 3時) (レス) id: cdd98bad11 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - あの、イベントを開催した者です!私の作品にコメントくれてましたよね…?この作品は元々すべて読んでいたのでイベント参加していただき嬉しいです!頑張って下さい! (2019年11月20日 20時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - さーさん» コメントありがとうございます!楽しみにして頂いているなんて、とても嬉しいです……!!グダグダになってしまうかもしれませんが、私なりに頑張ろうと思います。何かご要望等ありましたらお気軽にコメント欄までお越しください! (2019年9月5日 23時) (レス) id: cdd98bad11 (このIDを非表示/違反報告)
さー - いつも楽しみに読んでいます!応援しています!これかりも更新頑張ってください (2019年9月5日 20時) (レス) id: 716768484e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - こここさん» コメントありがとうございます!毎日楽しみにして頂けるなんて光栄です。読みづらい点も多々あるかと思いますが、これからも応援して頂けると幸いです。何かリクエスト、ご意見等ありましたら、お気軽にお申し付けください。 (2019年9月2日 17時) (レス) id: cdd98bad11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2019年8月29日 1時