５川上さんと…？ ページ5
「もどってきちゃだめだよ、っていわれたんだ。おにいさんたちは、あのおりのなか、なのに。ぼくだけ……っ」
鼻水を啜る音が聞こえて、頭の中がプチパニックを起こす。
熊の顔も悲しそうだ。
「良い人に拾ってもらいなっていわれたんだ。
逃げて逃げて遠くへ行って。大きくなったら、迎えに来てよって笑ってた……」
「ぼくね、たすけたいの。ぼくをたすけてくれたおにいさんやおねえさんをたすけたいの。いつもまもってくれたから。でも、もどりたくない」
熊をゆっくり、だけど手放すまいとしっかりと抱きしめる。抱きしめる力が強くて、熊は少し息苦しそうだが、熊の瞳には強い決意の色が見えた。その熊を抱えている彼女の瞳には、反対に迷いの色が窺えた。
「ねえ、キミはぼくをどうしたい？」
「俺は―――」
「ぼくであそぶ？それとも、―――たすけてくれるの」
＿＿＿俺は情けない。何、こんな子に助けを求めさせてるんだ。
言わずもがな、俺の回答は決まっているというのに。家に来い、と言った時点できっと腹は決まっていただろうに。何を迷っているというのだ。
「俺は、キミを、―――助けるよ」
彼女の目をまっすぐに見つめて、言い放つ。この責任は俺が全部受け持つから。伊沢さん達には、迷惑かからんようにするから。だから、……この子を助けさせてください。
無神論者である俺が、神に心からの願いを告げる。
なんてカッコいいものではない。下手したら、俺はこれで一生を棒に振ってしまうかもしれない。……これは、確実に伊沢さん達に迷惑がかかる。でもそれを最小限に抑えることは可能だから。
「よし、これから家帰るで」
伊沢さんの協力を得るために、オフィスへと向かう。
涙を拭おうと手を伸ばせば、その手は叩かれてしまったが、不器用な笑顔の作り方に少しだけ安堵のため息が零れ落ちた。
店の外に一歩足を踏み出した当たりから、急に彼女は歩みを進めなくなった。
どうしたものかと振り向けば、また顔の前に熊をもってきて、俺に何かを告げようとしている。
「……ぼく、せがひくいから。キミのあしでまといになっちゃう」
悲しそうな声色で、語り掛けてくる熊。
……そうか、気にしてるのか。自分の歩幅が狭いこと、俺より遅く歩いてしまうことを気にしてるのか。
なんや、可愛い奴と思いながら、そっと傍に駆け寄って、抱き上げる。
「ええよ、そんなん気にせんで」
震える体を抱きしめて、足早にオフィスへと向かった。
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瑞西（シャラルー☆）(プロフ) - ゆのさん» わわ…っ、ありがとうございます！確かに、主人公ちゃんは可愛らしい（真顔）素敵なパワーをいただけたので、さらに良いものを提供できるよう頑張ります(*´▽｀*) (2019年12月25日 18時) (
レス) id: 705dc09b7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - 主人公が可愛くて、お話も素敵で、情報の管理もしっかりされていてすごいと思います！お話楽しみに待っているので、作者さんのペースで頑張ってください！応援しています(p｀･ω･´q) (2019年12月25日 9時) (レス) id: 6ede61fc28 (このIDを非表示/違反報告)
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