１２川上さんと…？ ページ12
「ごちそうさま、でした
……くま、食べる？―――食べないか、くまは、はちみつの方が好きだもんね」
「？ なにやっとるん？」
「くまにご飯あげようと思って」
完食するのが速いなぁと思ったら、そういうことか。
まだ空になっていない容器と彼女を交互にみて、首を傾げる。
「……もう、お腹いっぱい？」
「う……、うん。おなかいっぱい」
「嘘つけ」
「嘘じゃないもん。かわかみさんほど下手じゃないもん」
ふいっと顔をそむけたこぐまちゃん。俺より下手じゃないって、それ……嘘ついてるってことやんか。
「食べないなら俺、食べちゃうで？」
「いいよ」
「……ほんとに？」
「...たべる」
じっと見つめて問えば、まだ食べたりなかったのは間違いなかったようで、大人しく手を合わせ食べ始める。一本一本、フォークでさして食べる姿は、本当に可愛らしい。年相応ともいえる姿なのに、過去は壮絶、現在も地獄。この子は前世はいったい何をしたのだろうか、というぐらい環境に恵まれなさ過ぎだ。
「……？どした？」
「...本当に食べていいの？」
「お腹すいてんなら、食べな。お腹いっぱいなんやったら残しても構わんけど」
「……ぅ、わかった。たべる」
うっすらと。ほんの数ミリほど。こぐまちゃんの眼球を薄い膜が覆った気がした。
再び俺達の間に静寂が訪れる。
黙々と冷めてしまったうどんを食べ始めているこぐまちゃんを横目に、伊沢さんに連絡を取れば、すでに撮影準備はしてくれているそう。後は、俺が司会をしにいくだけ。
撮影が終わったら話があります、という旨のLineを送れば、伊沢さんは「り」とだけ返事を返してきた。
「ごちそうさまでした」
「はい、おつまつさまでした。……少しゆっくりしたら、いこか」
お腹いっぱいの時は動けないよなと思い、しばらく休憩することに。
スマホ片手にこぐまちゃんを眺めれば、はっと思いだす。
(あれ？俺、今日まったくツイートしてなくね？)
さっとアプリを開いてみれば、前回のツイートは17時間前と表示されている。
あちゃーと頭を抱えながらも、公式から流れてくる記事をリツイートしたりほかのライターにリプをしたり、日常を呟く。
その作業も終えて、こぐまちゃんを見れば、うつらうつらと船を漕ぎ始めている。
「眠いん？」
「う……ぅうん、ねむくない」
「眠いんやろ、寝ていいよ...ったく」
俺の言葉を聞く前に、すでに彼女は夢の中だった。
彼女を抱えてコンビニを出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 272人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑞西（シャラルー☆）(プロフ) - ゆのさん» わわ…っ、ありがとうございます！確かに、主人公ちゃんは可愛らしい（真顔）素敵なパワーをいただけたので、さらに良いものを提供できるよう頑張ります(*´▽｀*) (2019年12月25日 18時) (
レス) id: 705dc09b7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - 主人公が可愛くて、お話も素敵で、情報の管理もしっかりされていてすごいと思います！お話楽しみに待っているので、作者さんのペースで頑張ってください！応援しています(p｀･ω･´q) (2019年12月25日 9時) (レス) id: 6ede61fc28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
