戦国BASARA〜愛しき花よ、切なき花よ〜【希望の道】

３８８．喪っても失われないもの ページ9

自ら命を絶ち、崖に落ちた半兵衛をAは嘆き、後を追おうとしていた。


A「嫌……嫌ァ……ッ！」

小十郎「馬鹿野郎！死ぬ気かッ！？」


　崖から落ちようとするAの腕を掴んだ。


A「放して！半兵衛を…半兵衛を助けなきゃ…」


　半兵衛の死を受け入れようとしないAを、小十郎は掴んでいた彼女の腕から両肩をガッと掴み直した。


小十郎「いい加減現実を見やがれ！竹中は死んだんだッ！」

A「！」


　小十郎の叱咤(しった)で暴れていたAの動きが反射的に止まった。


小十郎「お前にとっては、竹中はかけがえのないものかもしれねえ。だがお前がいつまでも死を受け入れなければ、死んでいった者達の魂は、安らかに眠る事ができねえんだぞ！」

A「小十郎さん……」

小十郎「失ったものばかり数えるな。お前には、まだ残っているものがあるだろ？」


　残っているもの……。
　Aは頭の中で、それを思い浮かべてみた。
　幸村、佐助、信玄、謙信、かすが、慶次、利家、まつ、元親、喜多、景広、伊達軍、小十郎、そして――最愛の人・政宗。


(……そうだ。私にはまだ、失っていないものがある。こんなところで立ち止まっていたら、また大切なものを失くしてしまう。
……もう泣かない。もう迷わない。これが、私の信念。そしてこれが、私の生き様――)


A「……私、行きます」


　目尻に溜まっている涙を拭い、吹っ切れた眼を表す。


A「政宗さんを迎えに行って、父上と別れの挨拶に行ってきます」

小十郎「…ああ、行ってこい」


　厳しい顔から相好を崩す小十郎。
　二人は微笑み交わした後、Aは馬に跨って東へと駆け出した。

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