386.あなたさえいれば ページ7
Aは言葉を紡いだ。
A「私…嬉しかった。あの時、半兵衛は思い出を作るために仕事よりも私を選んでくれた。
初めて町に行ったり、蛍を見たり、桜を見たり…凄く嬉しかった。こんな疫病神のために、優しくしてくれて……。
半兵衛さえいてくれれば、何もいらない。だから…お願い――」
離していた顔を半兵衛の胸に顔をうずめ、
A「私を置いていかないで…。私が半兵衛の病気を治すから……生きたいって、ずっと傍にいると言って……」
肩を震わせ切なる願いで涙するA。思わず嗚咽が漏れる。
彼女のすすり泣く声だけが響くなか、半兵衛の次の言葉によりそれを破った。
半兵衛「…ありがとう、A。その気持ちだけで十分嬉しいよ」
半兵衛は穏やかに微笑むと、Aの両肩を掴み顔を見交わす。
半兵衛「君は僕がいなくても生きていける。それはAにも気づいている筈だ」
A「…無理だよ。半兵衛がいなきゃ、私は弱いまま……強くなんかなれない」
俯きながら目を伏せ涙声で首を横に振る。
半兵衛は彼女の白い頬に血が濡れていない手を優しく添えた。
半兵衛「思い出して、A…君はこれまで、たくさんの壁を乗り越えてきたじゃないか。苦しみと悲しみ…運命の波に翻弄されても、怯まずくじけなかった。
君は優しくて強い人間だ。ねねにも、そう言われたんだろう?」
Aは顔を上げて、瞳を濡らしながら半兵衛を見つめる。
A「…うん」
半兵衛「なら、きっとこれからも苦難を乗り越えられる筈だ。僕がいなくても一人で前を歩いていける。僕は、そう信じている」
柔らかに微笑む半兵衛を見つめ、Aは添えられた頬に彼の手を重ねた。その手に触れた瞬間、Aは幼い頃の『手』の感触を思い出す。
半兵衛の手は、記憶の手とは違い、長く細まる指の形と質感があった。けれども、武骨な手ではなかった。
慶次『もしかして、運命の人でも探してるの?』
慶次が言った言葉をふと思い出す。そして確信した。
ああそうか、運命は最初から定められていたんだ。
私の運命の人は、半兵衛じゃなかったんだね……。
半兵衛「A……最後の願いを聞いてくれ。僕を……」
半兵衛はAの手に得物を握らせた。半兵衛の関節剣だ。
半兵衛「僕の
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コマさん - 最初から読みました!とても感動しました。゚(゚´Д`゚)゚。 (2017年5月7日 12時) (レス) id: 29a322c6a9 (このIDを非表示/違反報告)
クイナ - えーと、楽しく読ませてもらってんスけど...。ワンピース入ってますよね。何か全然違和感無くておもろいッスよ (2016年3月28日 11時) (レス) id: 878c05571f (このIDを非表示/違反報告)
舞 - はじめまして、舞です。私も最初っしょから読ませていただきました(^O^)とても素敵で感動しました。本や漫画にしてもおかしくないです。素晴らしい物語でした。ありがとうございました。 (2014年5月9日 22時) (レス) id: 7c57ccdb7c (このIDを非表示/違反報告)
☆ひいらぎ☆(#´^`#)/(プロフ) - 最初っから読ませて頂いたのですか、凄く感動しました!私も結構涙脆いので、途中でボロボロ泣いてましたwとてもよかったです! (2014年3月9日 4時) (レス) id: fcd858585a (このIDを非表示/違反報告)
花海月ヒリス(プロフ) - 双龍阿修羅@元朱雀さん» 見てくれてありがとうございます!今後出される作品も楽しみに待ってて下さいね(^_^) (2013年11月11日 22時) (レス) id: faf94e31c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花海月ヒリス | 作成日時:2013年9月12日 16時