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哀しかったから、嬉しかった ページ47

着信履歴のその主は奥さんであり、それと共に伝言が一つ入っていた。

 由貴にその旨を話すと、彼女が真面目な眼差しで私を射抜いてこう言った。

「聞く前に、今、Aはどうしたい? 関わるか、関わらないか」

「私は――」

 こくりと唾を飲んで携帯の画面に映る名前を見つめる。奥さんの話し方や雰囲気や温もりを浮かべて、関わりたいという思いが溢れるけれど、彼女の涙や哀しい笑顔がその気持ちを重く抑えつける。

 けれど、このままではダメだと思った。どちらの選択肢に進むにしても、ちゃんと決めなければならないと思った。

「まだ奥さんの事を引きずってるのは事実だから、奥さんの言おうとしてることを聞きたい。いずれにしても、このままではずっと私の中で引きずってハッキリしないまま過ごすことになるから」

 それに奥さんの名前を見た時、私は嬉しかった。感じた胸騒ぎは不安からではなかった。

 数年前、「もし奥さんの気持ちが変わらなければ――」と言って別れてから、本当はずっと期待していたのだ。ただ、そんなことを思うのは立場が無いのと筋違いであるから、その気持ちから目を背けていただけだった。
 だから、ずっと連絡が無い間、二人が上手くいっているのを安心する反面、奥さんの名前を見ないのは悲しかった。

「Aの気持ちが素直にそう思うなら、聞いたらいいと思うよ。私は、Aがどんな選択しても、それが悪いとは思わないから」

 彼女の言葉が優しすぎて、心が砕けそうになる。「ありがとう」泣きそうになるのを抑えて一言呟いて、私は奥さんの伝言を再生した。

『恵美です。突然電話してしまい、ごめんなさい。Aちゃん、私のことを覚えてくれていますか? これを聞いたら、連絡下さい。……もう一度、会ってください』

 短い時間でその声と言葉からひしひしと伝わる奥さんの気持ちが、私の中の何かを溶かして、それが目から零れ落ちた。


 その夜は、由貴の隣で温もりをもらいながら、本当に久しぶりに深い眠りについた。

 そして翌日、私は奥さんに向けてダイヤルを回した。

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設定タグ:オリジナル , 名前変換 , 不倫   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
- 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
- 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時

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