一人ぼっち ページ19
-Aside-
朝倉さんと別れると同時に父親が消えてから、もう一ヶ月の日々が過ぎた。
私はやっと自分の家に戻ることにした。まだ帰る勇気は無かったけれど、これ以上は本当に由貴の世話にはなれない。
彼からの電話を取れなかったあの日、疲れ果てた私を由貴が、何かあったのかと心配してくれたけど、何も言えなかった。ただ仕事に疲れただけと誤魔化すと、彼女は納得していた。いや、納得したフリをしてくれたのかもしれない。
あれ以来、彼からの連絡はない。
私はこんなにも貴方が忘れられないのに、貴方は忘れてしまったのだろうか。貴方にとって私は、もうただの過去の記憶で、色あせていくのかな。
心の奥の本当の自分が、悲しくて、寂しくて、声にならない想いを叫んでいる。
電車に揺られながら、彼について覚えていることを一つずつ数える。いつか反対に一つずつ忘れていくのだろう。
家に着くと、懐かしい匂いに包まれて、胸が締め付けられた。
こんなに家を空けても、あの父の声は聞こえない。あの人の気持ちを知る前なら、それが嬉しかったかもしれないが、今は心に風が吹き抜けて、今日からこの家に一人ぼっちなんだという事実が迫る。
こんなときは、朝倉さんに抱き締めて欲しい。その胸で泣かせて欲しい。
でもこれは、今まで彼の優しさを奥さんから奪っていた罰だから、ちゃんと苦しみを受け入れなければいけない。
彼は今、何をしているんだろう。奥さんと笑い合ったり、冗談を言い合ったりしているのかな。
私もそんな誰かに出会えるだろうか。その時はちゃんと彼のことを忘れられているだろうか。想像すら出来ない。
ただ彼の面影を抱いて、孤独の中で眠る。
とても疲れていたせいか、涙は出なかった。
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
あ - 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時