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「はぁい」
ピンポンとチャイムを鳴らすと、航平の間延びした声が返ってくる。急に会いたいと言い出した私に、彼は快く応じてくれた。
今日風が強かったから髪が崩れてないかな、大丈夫かな、なんて色々気にしてしまって落ち着かない。ドアが開くまでの時間が長く感じられて、心臓がうるさく音を立てた。
「ごめん、遅くなって_____」
ガチャ、と音がして顔を上げると、困り眉の彼が一瞬にして目を丸くした。
「…は?」
「ごめんね、急に押しかけて」
ぎゅ、と鞄の持ち手を握る。そろりと彼の方を見ると、耳を赤く染めて口元を覆っていた。
「え、え…Aどうしたの、それ?!」
なんで耳赤いの、と私が聞く間もなく、彼の口が先に動く。自分を落ち着かせるようにと小さく深呼吸をしてから。私を頭のてっぺんから爪先まで見て、彼はもう一度聞き返した。どうしたの、って。
「似合わ…ない、かな」
友達にやってもらったんだけど。普段のナチュラルメイクとは打って変わった今日の私。きゅっと唇を真一文字に結んで彼を見上げると、今度は頬まで真っ赤にした彼が、私を見つめていた。
「いや、その…すごく、かわいい」
その恥ずかしそうに言う姿が、私の想像とまったく同じだったものだから、なんだかおかしくって。
「もう、顔真っ赤だよ?」
人差し指で軽く頬をつついてやると、航平はぷく、と頬を膨らませた。
「Aが、可愛いからじゃん」
まるでずるいのはそっちだ、と言わんばかりだ。そんなところも、好きなんだけど。
「とりあえず…中入りなよ」
ようやく外の寒さとおさらばして彼の後に続くと、彼はまだ口元を手で押えていて。それが嬉しくて、くすぐったくて、私の口元も緩む。
秋桜の香りの練り香水を塗り直し、私は小さくガッツポーズをした。大好きだよ、航平。
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コスモスの花言葉は『乙女の真心』
イメージはだーりおです。
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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時