秋桜の乙女心/ko-chan ページ7
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「ねぇA、絶対これ似合うから!」
お願い、1回だけ着てみて!と友人に促され、普段着ない色のワンピースに袖を通した。普段着ないものを着るというのはなかなか緊張するもので、それでも心が躍って。
「やっぱり可愛い!」
なんてあんまりにも言われるものだから、ついつい乗せられてワンピースを買ってしまった。お財布には優しくないけど、心は充実していた。
せっかくだからこのままコスメも選びにいかない?と袖を引かれ、あっという間に連れていかれてしまう。
「はずかしいよ…」
「何言ってるの!彼氏にも見せたいくらいの可愛さでしょ」
彼氏、という言葉に思わず頬が熱くなる。航平は、いつもと違う私を見たらどう思うかな…
頭の中で、『A…可愛い』と照れる彼のことを想像して、なんだか口角が上がってきてしまう。
「今から会いに行ったら?」
「え、」
せっかくおめかししたのに会わないなんて、損じゃない?と屈託のない笑顔を見せて、私に詰め寄る。ずい、と迫られてはどうしようもないけれど、確かに…彼に会いたい。
でも、急になんて。今日彼の仕事が休みなことは知っているけれど、いきなり会うのは迷惑じゃないだろうか。そんな思考がぐるぐると頭の中を巡った。
「…会いに、行こうかな」
それでもやっぱり会いたい気持ちが強い。照れ隠しに指を組むと、友人に借りた練り香水が香った。
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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時