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「すきじゃない……」
トマトがたっぷり入ったサラダを目の前にして、拳くんが食べたくないとこの期に及んで駄々をこねる。
「答えわかんなかったんだから仕方ないじゃん」
まあ正直なところ、花が咲いている状態がメジャーではない野菜だから、最初から当てさせる気がないと言ってしまえばそれまでなんだけど。
「結局…あれ何だったの?」
トマトと格闘していた彼が、ようやく一欠片飲み込んでため息をついた。
「あれは小松菜」
放っておくと花が咲いちゃうんだよ、と教えると彼は首を捻った。イメージが湧かないのだろうか。
「小松菜って根本が赤いやつ…だよね」
「それはほうれん草だよ…」
一時は違いを覚えたと言っていたのに、しばしば間違えるのは定着していない証拠だ。本当に必要な情報だけを取捨選択して生きているんだなあと実感する。
「ちょっとずつでいいから覚えようよ」
「うーん…まぁそのうち……」
いつまで渋る気なんだろう。まあいじられなくなっちゃうのは、寂しいけれど。なんだかんだ言って、きっと拳くんもわたしも、こうやって言い合っている時間が好きなのだから。
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小松菜の花言葉『小さな幸せ』
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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時