クロスステッチで描く夢

満月だけど2 ページ2

あれから1週間。何も無いまま時間が過ぎてしまった。私が勇気を出していれば、ふくらさんの手がもう少し近ければ、変わったのかもしれない。色々な考えが頭の中をぐるぐる回っていて悔しい。

でも今日は仕事。切り替えて仕事をしないと行けない日だ。気合いを入れ直して執務室のドアを開けようとしたそのとき、河村さんの声が聞こえた。

「で、ふくらはいつAに告白するの？」
「別に好きとか、そういうわけじゃ…」

そう言うふくらさんの声色は、私のことが好きなのかどうかはっきりしないように聞こえた。いつもと同じ声で、優しい声だった。

今まで勝手に好かれていると思っていたけど、違うかもしれない。あのときとは違う涙が目に浮かんだ。このままじゃ部屋に入れない。私はオフィスを飛び出した。


がむしゃらに走ってたどり着いたのはオフィスの近くの公園。気持ちを落ち着かせようと缶コーヒーを買った。焦っていたせいで、温かいのを買うつもりが冷たいのと間違えた。

「さみしいよ、」

小声でひとりごちた寂しさは宙に消えた。赤くなった目を擦り、今までのことを思い出す。初めて食事に誘ってくれた時、顔を赤らめていたこと。誕生日に渡したネックレスを、オフィスに来る時つけてきてくれること。それは、勘違いだったのかもしれない。自惚れてただけかもしれない。

…でも。誕生日プレゼントを渡した時の、赤らめた顔を、私は信じたい。
スマホを取りだし、ふくらさんに連絡をする。

『オフィスの近くの公園に、迎えに来てくれませんか』

この気持ちが、あなたの気持ちが嘘でないのなら、ダッシュで迎えに来てよ。私の涙を拭って、心配させないで。そして今度こそ、好きだと言って。

連絡に気づいたふくらさんがスマホを手に走り出すまであと少し。




ウルフボーイ/モーニング娘。

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