Kleinod Ⅴ (ページ5)

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大剣を持って、本部の方へと走る。
騒ぎで悲鳴をあげる者、泣き喚く者の姿が見えた。
そして、その中央で壊れたように、哀しそうに笑う松村の姿も。
ジェシー「北斗！」
人の群れを掻き分けて、今にも殺されんとしていた警備兵を庇うように前に立ち、彼の攻撃を剣で受け止めた。

ジェシー「北斗！落ち着いて！」
松村「あぁ、ジェシー、じぇしーも、おれの事、うらぎるんだぁ！」
ジェシー「違うよ北斗！俺は北斗の事裏切らないよ！」

松村「…は、あは、みんな、うらぎる、？しんじたのが、まちがい、まちがいだったんだ！」

恐らくリミッターも解除しているのだろう、弾き飛ばされたジェシーは、松村の攻撃から身を守るのに必死だ。
ジェシー「ねぇ！北斗話を聞いてって！ねぇってば！」
防戦一方で、必死に説得を試みるも負の感情の渦に飲まれている松村の耳には入っていないらしく、一向に応じてくれない。
森本「ジェシー！」
駆け付けた森本の声がして、彼が割って入るように短剣を振り下ろした。

森本「ジェシー、怪我してる人の救護の方に回って！」
ジェシー「でも、」
森本「樹はまだ出てこないし、きょもは上層部に事情説明してる、ジェシーしか出来ないの！」
ジェシー「…こーちの馬鹿、」
森本「…そんなの俺だって言いたいよ！」
半分涙声の森本の叫びが鼓膜に響く。
ジェシーは全部吐き出してしまいそうだった弱音を押し殺して、森本に頼まれた業務に移る。

一体どれくらい経ったのかはわからない。
ただ、森本の呻き声と誰かが倒れる音で我に返り、そちらを見ると、腹部を押さえて倒れている森本と気を失っている松村と、「お前…！」と叫ぶ、ここにはいないはずだった田中の姿があった。