Kleinod Ⅴ (ページ39)

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「は…？」
戻ってしまった「彼」は酷く動揺していた。
それでも、ジェシーには確かに聞こえていたのだ。
甘言に煽られ、催眠のような暗示にかけられてしまっても、
ジェシーは、「たすけて」という、「彼」の、「高地」の、救援要請を聞き逃さなかった。

「僕、そんな事言ってない、絶対に言ってない…」
ジェシー「ううん、言ってたよ。俺にはちゃんと聞こえたんだもん、こーちの「たすけて」って声、」
ぎゅ、と「彼」の温かい手を握り締める。
何度でも「彼」は否定するかもしれないけど、ジェシーはしっかりその悲鳴を受け止めたのだ。
「ごめんね」の裏に隠された、「たすけて」という救援要請を。

【ヒーローは必ず「たすけて」の声を聞き逃さない】

もしかしたら、バラバラにしてしまったのは自分かもしれない。
あぁ、自分が引き金を引いてしまったのかもしれない。
それなら、それなら？
自分がまた元に戻すしかない。
戻さなきゃ、戻して、また「6人」で。
そう、「6人」じゃないといけないのだ。
馬鹿みたいに笑って、戦って、まだ「6人」でやりたい事がいっぱいあるのに、
――こんなところで終わらせてたまるもんか！

物語の主役は、みんなを助けられる「光」でないといけない。
「偽物」に惑わされて、それでも振り切った常盤は、「人格」に踊らされた青藍を助けられても、「嘘」を吐き続けた黄檗の事は救えない。
ジェシー「ねぇこーち、気付いて」
それなら、この話の主役は？
夢に「逃避」した牡丹を、「依存」に狂わされた烏羽を救出出来るのは、
ジェシー「俺たち、誰か1人でも欠けちゃ意味ないんだよ」
「嘘」で全てがわからなくなっている黄檗を救えるのは、
全員を助けられる、そんな「主人公」は？

ジェシー「グループＳは「6人」じゃないと駄目なんだよ！」

全員を救う「ヒーロー」になれるのは、「光」である彼だけ。即ちこの物語の主役は、