Kleinod Ⅴ (ページ23)

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高地を見つけた、その連絡が入ってすぐ、松村が呼応するようにクラブの中へ入って行こうとした。
京本は慌ててその手を掴む。息を飲む音が聞こえて、恐怖に満ちた表情を浮かべる彼がこちらを見た。
あぁ、もうそこまで信用してくれないのか。なんて遠くに思いながら、平静を装う。
京本「高地を助けに行きたい？」
いつもと変わらぬ声で話しかけたつもりなのに、少し震えていたような気がするのは、きっと気の所為なのだと割り切った。

VIPフロアに続く階段には誰もいなかった。
何かあったのかと思いながらも、止める者がいないのなら遠慮する必要もないので京本と松村は階段を上がり奥へと進む。
彼等がいる場所はわからなかったが、気分を悪くしたらしい黒服が連れ添われてどこかへ連れて行かれるのを見つけ、その彼がやってきた方向へと進む。
覚えのあるラズベリーが鼻孔を掠めた。

VIPのルームはあまり干渉されないのか、ドアが閉じられた部屋の並ぶその場所は妙に静かだ。
別の黒服にルーレットがある場所を尋ねると、突き当たりの部屋に案内される。
嫌な予感がしたので同行は丁重にお断りした。

部屋を開けると、数名の客が倒れているのと、椅子に拘束されている1人の男性客が見えた。
そして、その前でへらり、と笑みを浮かべていた田中と森本、男性客と何かを話しているジェシー。
…きっと、あの男性客が変装した高地なのだろう。
松村「…こーち、」
ふらりふらりと、明らかに様子のおかしい田中を素通りして高地の元へ向かった松村を見て、田中が1つ呆れたように溜息をつく。

京本「…あんた誰」
いつもと何かが違う田中に、京本はその言葉を投げかけた。
《判別ついてるんじゃねぇの？》
挑発的な眼差しを向ける田中…ではない「何か」は、睨みつける森本と京本の視線に片方の口角をニィと上げた。