Kleinod Ⅴ (ページ21)

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《高地見つけて今とっ捕まえ…れそう、2階奥のVIP専用のカジノ…のルーレットのとこ！俺の名前言ったら通れるようにしたから来て、下の名前》
予め仕組んでおいた伏線を回収するように、メンバー全員が集まるように画策する。
「…凄いね、良い演者だ。役者向いてるんじゃない」
《お褒めの言葉頂きどーも》

「ねぇ、これ、解いてくんない？」
《まぁ落ち着けって。…あー、俺の本音、聞いてみる？》
「【黙って】」
何だかんだ結局はメンバーの事大事なんじゃないか。
あぁ、その大事にしてくれる矛先が自分に向けばいいのに。
大分薄れたラズベリーの中に、ほんのりバニラのような甘さが香った気がした。
…後天性能力、って訳でもないのに、本当上手く使いこなすなぁ。

「ねぇ、【これ、解いてくんない】？」
黙りこくっている自分に、彼はチャンスだと追い打ちをかけるように更に「扇動」する。
《…うん》
くるり、と「彼」の座る椅子の後ろへと回る。
安堵の息が聞こえた、気がした。
副作用の自分にもかかってくれた安心か、それとも、逃げ切れると確信したのか。

《……とでも思ったか？》
残念、お生憎様、「俺」はそんな「甘言」に騙される程、馬鹿じゃない。
これ以上「彼」が何も言わないように、布を口に噛ませて後ろに縛る。
あぁ哀れだなぁ？きっと俺ならわかった上でかかってくれていたのに。

田中(――待って、やめて、何もしないで！)
《……あーあ。起きちまった》
あまりにも悠長にしすぎてしまったか、そんな事を考えても起きてしまったものは仕方がない。
《へぇ、こんな風に聞こえてたのか。……っはは、そりゃ「俺」の事嫌うわけだ》
とはいえ、泣き喚くように叫ぶ俺に、呆れたように肩をすくめた。

森本「…………今、何て言った」
背後から怒りを噛み殺したようなメンバーの声が聞こえる。
振り向くと、どうやら今の言葉を聞いていたらしい、彼は静かな怒りを纏わせてその場に立っていた。