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神様の仕業なのか、
部屋まで行くと言ってくれた森本くんとエントランスを抜けたところで
鉢合わせてしまったのは母親と叔母で
母親の手には数週間前、突然家に押しかけたときと同じボストンバッグ
パンパンに詰められたそれが何を意味しているのかなんて
『…Aごめんね』
「……」
『Aは昔から物分かりいい子で強い子だから大丈夫って、
お母さん勝手に思い込んでたのかもね』
「……」
『…どうすればAを傷つけないでいられるかわからないの』
目に映る母親は私が一緒にいた頃よりもとても小さく見えた
小さくて、弱くて、脆く見えた
俯く母親の肩に触れると一瞬ビクッと反応する
「…保護者の、…なんかわかんないけど、色々が必要になる時あるかもしれないから」
電話番号を書いたメモを差し出すとゆっくり顔をあげる
…今、私と母親の間にはどうしても乗り越えきれない厚い壁がある
きっと、私にとって、その壁が消えることはない
だけど、少しずつなら薄くしていくことはできると信じたい
そのための、一本の細くて脆い糸を今結んだ
…もう決して切れませんようにと願いを込めて
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作者名:ダイア | 作成日時:2023年12月3日 18時