胡蝶の夢-2- (ページ33)

今日:9 hit、昨日:69 hit、合計:53,503 hit

83 ページ33

・

『だから…！迎えに来たんじゃないの、Aが大事だから、！』

「…今更だって言ってるの」

『迎えに今更も何もないでしょ？ほら、Aも一人暮らし寂しいだろうし』

「今…私をひとりにしないでいてくれる人がいるから」

『…付き合ってる人？そんなの一時だけよ』

「信じたい、って思える人なの」

私にここまでの変化を与えてくれたのは森本くんだから

面倒くさくて、うまく感情をもてなくて、

だけど彼とのためだったらどんなことを言われても折れちゃだめだ

「…だからもう、私はここに住み続ける」

『ねえ急にどうしたの？ずっとお母さんの言うこと聞いてくれてたじゃない』

「我慢してただけ、…もうひとりになりたくないから」

母親の表情が変わった

悲しそうな、寂しそうな、今まで見たことのなかったその顔は

なんだか見てられなくて下を向いたまま横を通り過ぎる

時間がないから最低限シャワーを浴びて、
制服に着替えて高校に行く準備をする

「…学校、行ってくる」

『……』

部屋を出て、

なんとなく気になって扉が閉まる隙間から見えた母親は

座って一点をボーっと見つめたままだった

・