82 ページ32
・
この扉を開けた先、どんな光景が待っているのか
どんな言葉を投げかけられるのか、わかりきっていたからなかなか踏み出せない
「…え、叔母さん入らないの」
『タイマンで公平に喧嘩してきなさい?』
私の元から一歩、二歩、と離れていく様子に妙に寂しさを覚える
…簡単に寂しさを感情として持てるようになったのもぜんぶ、
勇気を出して扉を開くと、
この狭い部屋の中を走るドタドタとした音が聞こえてくる
『良かった…、Aまで、Aまでいなくなったら、』
…やっぱり結局そうなんだ、
それを実感すれば自分の口は勝手に動き出した
「もう…そういうのやめてよ」
『え…?』
「自分の都合で捨てて、自分の都合でまた縋ってきて、
……もう振り回されるのは散々」
『すっ、捨てるってそんな言い方!』
「私は、あの頃の私は、…ああ私は母親に捨てられたんだってずっとそう思ってた」
血のつながった娘より、赤の他人を優先して
時間を忘れていただけなのか、それとも最初から決めていたことなのか
どっちかわからないし…別にどっちでもいいけど
結局そのあとずっと引き取りに来なかった時点で
母親にとっての私の存在はそういうものだった、ということ
その事実が一番の証拠
・
935人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ダイア | 作成日時:2023年12月3日 18時