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頬を軽く叩いて深呼吸をする
そうでもしないと家に帰る勇気が出ない
自分の居場所となっていた場所が
違うものへと変わってしまった今、それは言葉に表しようのない苦しみで
「…え?」
意を決して部屋に入ると無造作に置かれた段ボールが目に入る
『あ、おかえり〜A!
引っ越しね、思ったより早くできそうで!』
「…いつ?」
『月末にはできそうなの!だからあと2週間くらい?
急いで整理しないとね!』
「…そ、っか」
自分が自分として生まれてきたことをひどく憎んだ
あの日から…人を信じることをやめたあの日から、
ようやく信じたいと心から思う人に出会えたのに
ようやく自分に居場所を与えてくれる人に出会えたのに
ようやく…自分はひとりなんかじゃないって思わせてくれる人に出会えたのに
結局私はひとりになる運命なんだとそう静かに悟った
『新しいお家ね〜すっごい大きいの!
Aが働き始めたら協力してもらわないとね〜』
自分の暮らしに必要になったら私を求めるだけ
“男なんて…”っていうのもどうせ今だけ
少ししてまた好きな男でもできればすぐに私を置いてどこかに逃げるんだ
…一生、私は振り回され、一生ひとりで生きていくんだ
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作者名:ダイア | 作成日時:2023年12月3日 18時