「好きだよ」 (ページ35)

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80話　side-mm ページ35

知らない、私はそう答えた。

「…そう、知らないのね」
母はそう言うと私の髪を離した。
…何かおかしい。
いくら他人がいるからとはいえ、こんな素直になるか？さっきまであんなに怒鳴っていたのに。
母は、つかつかと担任が座り込んでいるほうに歩き出した。
先生はもうおびえきっていてぶるぶる震えている。
そして、ばちんと今まで聞いたことのない様な音をたてて母は先生の隣に立っていた弟の頬を思い切り叩いた。
ばちんばちん。
何も喋らず虚ろな目をして、まるでバグった機械のように母は弟を叩き続ける。
母の往復ビンタを何も言わず受け入れる弟。
なぜか、じわりと涙が浮かぶ。
なんで、どうして？
どうしてこうなってしまったんだろう？

と、その時。勢いよくドアが開いた。

「蓮！！」

突然やってきたその人に、さっきまで虚ろな目をして弟をビンタしていた母はびっくりしていた手を止めた。
そして、
「なんであんたがここにいんのよ！！」
怒鳴って、その人の前まで早足で歩いた。
「姉さんこそ何やってるのよ！」
その人＿母の妹で私たちの叔母さんは母の肩を掴み目を見てそう言った。
…よかった、間に合った…！
「…あんたには関係ない」
母が目をそらしてそう言った。
「関係なくない！！」
叔母さんはそう言うと、先生に目を向けてこう言った。
「すみません。また後日、お話聞きますので今日は帰っていただいても…」
その言葉を聞いた先生は
「あっ！はい！失礼します！」
震えている足をなんとか動かして出ていった。

「蓮ちゃん。弟くん連れて私の家行ってて。インターフォン鳴らせば旦那が入れてくれるから」
叔母さんは私の目を見てそう言った。
「…うん、わかった」
私はそう言うと、弟を連れて家から出た。