「好きだよ」 (ページ14)

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64話　side-mm ページ14

…私の弟は「女の子」だ。
かわいいものやきれいなもの、お人形さんが大好きで、部屋のクローゼットにはかわいい洋服がいっぱい入ってる。
お母さんが家にいないとき、メイクをしてかわいい洋服を着て街に遊びに行ってるらしい。

今日学校に行かなかったのは、きっと嫌なことがあったからなのだろう。

『最近クラスのみんなが陰で僕のことをオカマって呼んでるみたいなんだよね』
涙目で私にそう言ってきた弟のことを思い出した。
『僕は普通なのに。ねえ蓮ちゃん。
僕は、僕のままでいちゃいけないのかな？』
ぼろぼろと涙を流してそう言った弟のことを私はぎゅっと抱きしめた。

小さい頃から弟は「女の子」を隠して一生懸命「男の子」を演じてきていた。
好きでもないものを「好き」と言ったりして。
周りから浮いてしまわないように、「あいつなんか変だな」って思われないように、心が「女の子」だと気づかれないように必死だった。
…でもどんなに頑張っても、誰か1人が違和感に気づいてしまえば、そのことは「噂」となってどんどん広がっていく。
やがて「噂」が「真実」だと気づいたとき、周りは一斉に牙を剥く。
「あいつは女だ」
「気持ち悪い」
悪意のある言葉のナイフが心を刺していく。

『なんで人間って比べたがるんだろうね？ほら、テストの点数とかさ。
比べたって、点数が上がるわけじゃないのに』
いつだったか弟がそう聞いてきた時があった。
確か私はこう答えた気がする。
「……自分が、その人より優れてるってことを証明したいからじゃない？」