INNOCENT DAYS ３

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奏でたのは、、、ドビッシーの「月の光」



月の光が静かに夜の闇を照らすような幻想的な曲。


太陽の様に燦燦と輝く光ではないけれど、すべてを優しく包み込むような穏やかで美しいメロディー。



私にとっては、心が落ち着いて浄化される一曲。






なかなか逢えないし、私には何にもしてあげられないけど。



高嗣の言葉に私の心が癒されるように、私も少しだけでも高嗣のこと癒してあげられる存在になれたらいいのに…。



そんな気持ちをピアノに込めた。





音符が夜の静寂の中に、溶けた。








大切な人に聞いて欲しくて、、、大切な人のためにピアノを弾ける喜びを、大切な人に聞いてもらえる幸せを、、、初めて感じた。





伝わると、いいな。







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桜の頃はあっという間に過ぎ、太陽の光が強さを増す季節が近付いてる。




夕暮れに傾きかけたオレンジ色の日差し。



吹き抜ける風が心地よくて、高嗣と初めて逢った頃をふと思い出す。



あれから何年？



こんな日が来るなんて、全く想像もしていなかったけど。





近付くコンクールの予選を前に、相変わらず練習漬けの毎日だったけど、高嗣の久しぶりのオフに食事に行くことになった。



おうちでいいよ、って言ったのに「たまには外食しよ。」って誘ってくれて。



スクールの仕事を終えて、待ち合わせのお店に向かおうと駅へ急ぐ。



何だか嬉しくて、早く逢いたくて、小走りになる。



すると、バックの中のスマホが震えて着信を知らせた。




画面に表示されてる名前は………高嗣。



もしかして、忙しくて予定がダメになっちゃったのかな…？ってよぎる。



「もしもし。」


「あ、もしもしAちゃん？」


「うん。」


「あのね、、、、、」


一瞬の空白に、キャンセルの予感当たっちゃったかな？って思ったら、、、





「………………そんなに急いでたら、転ぶよ。」



「は、、、え？何？」



びっくりしてその場に立ち止まる私に、ククク、、、って電話の向こうから笑いをこらえてるみたいな高嗣。



「ねえ、うしろ。後ろ見て！」



高嗣の言葉に、慌てて振り向く。



キョロキョロする私に、反対車線に停車してる車が小さくクラクションを鳴らした。



それは、見覚えのある大きな黒い車。



え？





びっくりして慌てて近付くと、


「早く乗って！」


って、中から助手席のドアが開いた。




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